[特許]切り餅特許訴訟について(2)
知財高裁が「サトウの切り餅」の侵害を認める判決を言い渡しました。 |
切り餅に関する特許権侵害事件の判決が平成23年9月7日に知財高裁で言い渡されました(平成23年(ネ)第10002号)。この事件は、切り餅に関する特許権を保有する越後製菓が、佐藤食品工業に、「サトウの切り餅 パリッとスリット」や「サトウの鏡餅 サトウのサッと鏡餅 切り餅入り」等5品目の製造差し止めと14億8500万円の損害賠償を請求していた訴訟の控訴審です。
一審の東京地裁では、昨年11月に越後製菓側の請求が棄却されていました。しかしながら今回の判決は一審判決を覆すもので、越後製菓側の逆転勝訴といえます。
越後製菓が保有する特許は、切り餅の側面に切り込みを入れることを特徴としています。側面に切り込みを焼き途中で内部の膨らんだ餅が噴き出してしまうことを抑制できるそうです。
一方、佐藤食品工業の製品は、側面に切り込みがあり、さらに上面と下面にも切り込みがあります。
越後製菓の特許の請求項1では、「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け(る),」という記載があります。
佐藤食品側は、この「載置底面又は平坦上面ではなく」の記載が、「載置底面又は平坦上面」には、「切り込み部又は溝部」を設けない、という意味に理解すべきであると主張しました。
これについて、知財高裁は、①特許請求の範囲の記載全体、②発明の詳細な説明の記載、③出願経過等を総合して、「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載は、「側周表面」を特定するための記載であり、載置底面又は平坦上面に切り込み部等を設けることを除外する意味を有すると理解することは相当でないとの判断を下し、佐藤食品側の主張を退けました。
特許請求の範囲の文言解釈にあたっては、知財高裁は、「『載置底面又は平坦上面ではなく』との記載部分の直後に,『この小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に』との記載部分が,読点が付されることなく続いているのであって,そのような構文に照らすならば,『載置底面又は平坦上面ではなく』との記載部分は,その直後の『この小片餅体の上側表面部の立直側面である』との記載部分とともに,『側周表面』を修飾しているものと理解するのが自然である」と判断しています。
明細書を作成する際には、読点一つで運命が分かれる可能性があることを肝に銘じたいところです。
参考:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110908113622.pdf
以上