[特許/EP]欧州特許庁、2016年1月1日から早期審査プログラム「PACE」の見直しと明確化を実施
2015年11月30日付けの通知(Notice)にて、欧州特許庁(EPO)は早期審査の枠組みである「PACE」の見直しと明確化を行うことを発表した。適用は2016年1月1日から。
今回の見直しと明確化の背景としては、既報の「Early Certainty from Search (ECfS)」の枠組みを実施したことが挙げられている。同枠組みでは「出願日から6か月以内での調査報告及び見解書の発行」にEPOが取り組むことが含まれていることから、発表では、同枠組みの対象となっている2014年7月1日以降の出願については調査段階における「PACE」の請求は不要との説明がある(Noticeにおける「B. Search」段落8.参照)。
ただし、EPOが補充欧州調査報告書(supplementary European search report)を作成するPCT出願(具体的には、EPOが国際調査機関ではないPCT出願)の欧州域内移行については、今回の発表において「ECfSの下で、規則161(2)の期間(通知から6か月間の補正の機会)の満了から6か月以内に調査報告書を発行する」とされていることから、今後、調査段階の早期化には「PACE」の請求ではなく、規則161/162の通知の放棄(waiver)を選択する必要が明確になったと考えられる。
また、今回の発表では、「PACE」以外の審査早期化の手段として、「規則70(2)の通知(審査継続の確認)の放棄」、「規則71(3)の更なる通知(許可予告後に補正を行った場合のさらなる通知)の放棄」等が挙げられており、これらの手段と「PACE」とを適宜組み合わせて行くことも検討に値する(3番目の関連記事参照)。
その他、従前通りの点も含めて、見直し後の「PACE」については以下の点に留意する必要があると考えられる。
- 「PACE」の請求は、調査段階と審査段階のそれぞれの間で1回だけ認められる
- 出願人による期間延長の請求等によって「PACE」プログラムから外されると、2度目の「PACE」請求は認められない
- すべて又は多くの出願について「PACE」を請求した場合、通例、選択により数を絞るように求められる
- 審査段階については、審査部による出願の受領、規則70a(拡張欧州調査報告への応答)に基づく出願人の応答、早期審査の請求等のうち最も遅いものから3か月以内に次のアクションを発行するように、庁はあらゆる努力をする
- 審査段階で引き続き「PACE」の下で処理される場合、出願人の応答から3か月以内に次の審査に関する通知を作成するように、庁は努力する
【参考】
欧州特許庁「Changes to PACE programme from 1 January 2016」
欧州特許庁「Notice from the European Patent Office dated 30 November 2015 concerning ways to expedite the European grant procedure」
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