[商標/日本]審査期間の改善
近年、商標出願件数は増加し、2011年に約11万件であった件数は、2015年には約15万件となり、2017~2021年では19万件前後の水準にあった。この影響により、ここ数年、商標審査の遅延が悪化していたが、審査官の増員やファストトラック審査の奨励などの諸対応策により、2021年には改善が見られた。特許庁の統計によれば、ファーストアクション期間は、2018年:7.9月、2019年:9.9月、2020年:10.0月、2021年:8.0月だった。
そして、2022年では審査期間はさらに短縮の傾向にある。特許庁が公開している商標審査着手時期の目安を過去のデータと比較すると、審査期間が大幅に改善していることがわかる。
【2022年12月の審査着手状況】*マドプロを除く出願~審査までの目安期間は3~9か月
【2021年12月の審査着手状況】*マドプロを除く出願~審査までの目安期間は6~11か月
出典:特許庁HP(https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/status/cyakusyu.html)
*過去のデータは昨年の本トピックスのものを使用。
なお、昨年の政府目標は一次審査通知までの平均期間を6.5カ月、権利化までの平均期間を8カ月で設定していた。
<審査期間短縮のメリット・デメリット>
審査期間が短縮されることで、商標の使用開始予定時期によっては出願中ではなく登録後から使用開始することができ、商標の使用の安全性が高まるため、出願人にとって大きなメリットとなる。
一方で、出願商標が「宣伝広告等と認識されるに過ぎない」との理由で商標法3条1項6号の拒絶理由通知を受けた場合、審査基準に沿って「出願商標を一定期間自他商品・役務識別標識として使用していること」を立証・主張することが考えられるが、審査期間の短縮によって使用期間が想定よりも短くなってしまうため、上記主張においては出願人にとって審査期間の短縮がデメリットとなる。
また、自社にとって好ましくない第三者の出願を発見し、審査官に拒絶理由を出してもらうための情報提供を行うという場面では、審査期間の短縮によって証拠資料収集等の準備期間も短縮されてしまうため、競合企業等の第三者の出願のウォッチング・情報提供を行っている場合には、これまでよりも早期の対応が必要となる。
出典:
・特許庁HP(https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/shohyo_shoi/document/t_mark_paper09new/01.pdf)
・審査基準(3条1項6号)(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/document/index/10_3-1-6.pdf)