[特許・実用新案・意匠・商標等/韓国]韓国特許庁の知的財産政策の方向性
2022年8月18日、韓国特許庁長官は知的財産政策を発表した。この知的財産政策の中でポイントとなる点を以下に説明する。
(1)特許審査に退職専門人材を投入
半導体など核心技術分野の退職専門人材が、以下に示すスケジュールで投入される。退職専門人材とは、技術分野における専門家であって民間企業等を退職した人のことである。退職専門人材の投入により、審査の専門性と迅速性の向上につながることが期待される。
(2)秘密特許制度の導入
経済安保上必要な場合の対応として、国家核心技術が特許出願後に公開され流出しないよう「秘密特許制度」導入が推進される。この政策は、新政府の国政課題に基づくものと考えられるが、韓国では、既に秘密特許制度が導入されている(韓国特許法第41条)。この点について、出典6に示すJETROの記事では「韓国では国防関連技術について既に秘密特許制度が導入されていることから、この対象拡大を検討しているとみられます。」としている。
なお、国家核心技術の流出防止のために営業秘密流出に対する処罰も強化される。
(3)半導体を優先審査対象に
特許法施行令の改正により、半導体など先端技術関連の特許出願に対して優先審査対象への追加が計画されている。現在、半導体分野の特許審査は約12.7ヶ月かかっているが、今後は約2.5ヶ月に大幅短縮される予定である。特許法施行令の公布及び施行は2022年10月に予定されている。
(4)知能型審査システム
高性能の従来比100倍の処理能力を有する人工知能を取り入れた知能型審査システムが2027年まで構築される。これにより、従来の人工知能に比べ類似特許・商標検索の精度を大幅に向上させることが期待されている。
(5)特許ボックス制度
企業が知的財産権を事業化して発生した所得に対して租税を減免する制度である「特許ボックス制度」が設けられる。中小・ベンチャー企業が知的財産を基盤に事業資金を調達できるよう、知的財産の金融規模が2021年の6兆ウォン(約625.2億円※1)から2027年には23兆ウォン(約2396.6億円※1)まで大幅に拡大される。
※1 2022年9月8日のレートで換算
(6)紛争リスク関する情報の提供等
韓国企業に対し、特許不実施主体(NPE)などの海外企業による技術分野別紛争リスクが事前に提供され、NPE特許無効資料の調査などの支援がなされる。
上記の他、審判の専門性確保のための組織及び制度改善も進められるとされている。
【出典】
1.韓国特許庁「특허출원 세계 3위 도약으로 역동적 경제성장 이끈다」
2.現地代理人によるニュースレター
3.JETRO「特許出願世界3位への飛躍でダイナミックな経済成長を引っ張る」
4.崔達龍国際特許法律事務所「韓国特許法(和訳)」(PDF)
5.JETRO「尹錫悦新政権の知的財産政策は?」
6.JETRO「韓国特許庁、政権交代後初の知的財産分野総合計画を発表」