[商標/米国]出願時の料金体系の変更(2025年1月18日~)
2025年1月18日に発効する米国特許商標局の規則により、出願費用(庁費用)にいくつかの加算が設定される。これは米国出願費用の予測を困難にし、出願戦略に大きな影響を与える可能性がある。
なお、この規則改定は基本出願費用や使用宣誓書提出費用、更新費用、情報提供費用等の様々な費用の改定や増額を含むものの、実務に大きな影響を与えるものではないため、本稿では詳しく触れない。
今回導入される加算は下記の3種類である。
<①情報不足加算>
これは出願に必要な基本的な情報(出願人の住所、設立場所、事業形態、商標の説明、商標の翻訳等)が願書に適切に含まれていなかった場合に適用される。基本的には適切に願書を作成すれば回避できると思われる。ただし、ここでの要件には「商標の翻訳」が含まれており、出願商標が偶然に何らかの言語で意味を有する場合、その意味を記載しなかったことで加算が適用される可能性もある。そのため、出願前には翻訳ソフト等でチェックをすると安全である。
*この加算は2025年1月18日以前の出願にも適用されると思われる。
*この加算は区分ごとに計算されるため、区分数が多い出願においてはかなりの追加費用が発生する可能性がある。
<②フリーフォームテキストボックス加算>
これはUSPTOのデータベース(Acceptable ID Manual)にない非標準的な商品・役務を指定する場合に適用される。今後、出願時には出願フォームにおいて直接IDマニュアルにある商品・役務を選択して出願し、IDマニュアルにない商品・役務を指定する場合に「フリーフォームテキストボックス」を使用することになると思われる。米国では実際に使用している商品を表現したり、特定の先行商標との抵触を回避するために特定の分野を除外したりするために、いわゆる「積極表示」を活用することが多かったが、今後、このような場合はテキストボックスを使用した区分につき200ドルが加算される。
<③文字数制限加算>
上記の「フリーフォームテキストボックス」に商品・役務を入力する場合、読点やスペースを含む最初の1000文字を超える1000文字ごとに200ドルが加算されることになる。なお、「フリーフォームテキストボックス」を使用しない場合(すなわち、IDマニュアルにある商品・役務のみを選択する場合)、商品・役務の文字数が1000を越えても加算は適用されない。
上記の①~③の加算は重複適用されるため、案件によっては米国出願の費用が大きく増加する可能性がある。
これらの加算はマドプロ出願には適用されない。マドプロ出願の個別手数料も値上げされる予定であるが、それでも費用面ではマドプロが有利なことが多いと思われる。米国における出願費用の増加と予測性の低下を考えると、今後、米国についてはマドプロ出願の利用を積極的に検討する価値があるといえる。
【出典】
1.米国特許商標局ウェブサイト
https://www.federalregister.gov/documents/2024/11/18/2024-26644/setting-and-adjusting-trademark-fees-during-fiscal-year-2025