[不競法/日本] 不正競争防止法等の一部を改正する法律の公布(デジタル空間での模倣行為)
「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が、令和5年6月7日に可決・成立し、令和5年6月14日に公布されました。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/sangyozaisan/fuseikyousou_2306.html
今回の法改正は、知的財産の分野におけるデジタル化や国際化の更なる進展などの環境変化を踏まえたものであり、意匠法改正による新規性喪失の例外適用手続の緩和をはじめ、商標法、特許法、不正競争防止法等の一部が改正され、時代の要請に対応した知的財産制度の見直しが図られています。
本稿では、そのうち不正競争防止法の改正による、デジタル空間(いわゆるメタバース上)での模倣行為の禁止について解説します。
不正競争防止法2条1項3号は、他人の商品をそっくり真似した商品(いわゆるデッドコピー)を販売等する行為を禁止しています。
改正前の規定によれば、現実世界での商品の販売等(例えば、実際の店舗における販売等)だけが禁止の対象と考えられていたため、デジタル空間での販売等(例えば、その商品をそっくりCG化した画像や映像等のメタバース上での販売等)を同法で禁止することは困難でした。
そこで、同法2条1項3号を改正し、同号が規定する禁止行為に「電気通信回線を通じて提供」する行為も追加することにより、上記のようなデジタル空間での販売等も禁止の対象であることが明記されました。
ただし、同号の禁止行為に該当するためには、現実世界での商品とデジタル空間での商品が「実質的に同一」(ほとんど同じと言っていいほどそっくり)であることが必要です。
現実世界での商品同士であれば、実際に手に取って両者を比較することができます。
しかしながら、デジタル空間での商品ではそれができないため、例えば、二次元のみで再現された画像や映像では、「実質的に同一」であることの主張立証が困難な場合も想定されます。
とはいえ、メタバース市場が拡大する中、デジタル空間での商品の取引は今後ますます進化・多様化していくと見られているため、今回の法改正がメタバース事業者やクリエイター等に与える影響は小さくないと言えます。
なお、本改正法の施行日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。