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【特許・実用新案・意匠/中国】専利法実施細則・専利審査指南の改正(第4編)  ~ コンピュータプログラム関連発明の登録要件 ~

 既報の第3編では、一般的な登録要件に関する改正点を解説した。今回は、コンピュータプログラム関連発明の登録要件に関する改正点、すなわち、審査指南の第二部分第九章「コンピュータプログラムに係る発明専利出願の審査に関する若干の規定」における改正点を解説する。

1.コンピュータプログラム製品クレームに対する承認
 従来、中国ではコンピュータプログラム自体について特許を受けることはできなかった。そのため、例えばクレームにコンピュータプログラムが含まれている日本の出願と同一の内容で中国に出願する場合には、コンピュータプログラムに関するクレームを削除、あるいは方法や記憶媒体に補正する必要があった。

 今回の改正により、下記表の⑤のクレーム記載方法およびその事例が追加され、外国出願に記載しているようなアルゴリズムやステップなどによる限定を加えたコンピュータプログラムも特許を受けることが可能となった。

 改正審査指南の施行に関する経過措置などが公布されていないため、⑤のクレーム記載方法は、既に出願した案件へ適用できるかという点については、明言できない。しかしながら、審査指南に④のクレーム記載方法が追加された2017年の改正時と同様であれば、既に出願した案件の明細書において「コンピュータプログラム製品」という記載がなかったとしても、自発補正または拒絶理由通知に応答する時の補正で⑤のようなコンピュータプログラム製品のクレームを作成することが認められるのではないか、と考えられる。

2.アルゴリズム特徴やビジネス規則・方法特徴を含む発明への審査の基準に関する改正
 従来、審査指南の第二部分第九章第6節には、アルゴリズム特徴やビジネス規則・方法特徴を含む通常のコンピュータプログラムに係る発明についての審査の基準が規定されていた。しかしながら、近年益々発展してきている、人工知能、インターネットプラス、ビッグデータおよびブロックチェーンなどに係る技術分野の発明も上記特徴を含んでいることが多いものの、審査指南にはこれらの技術分野の発明に関する審査の基準等は詳しく規定されていなかった。

 上記技術分野の審査ニーズに対応するために、今回の改正により、上記技術分野の審査でよく問題となる1)発明該当性、および2)進歩性の要件について、詳しい説明および事例が追加された。以下、要件ごとに改正点をまとめる。

 1)発明該当性
 ①発明該当性が肯定される方向に働く要素に対する説明追加
 ・人工知能、ビッグデータアルゴリズムの改良に関する発明のうち、ディープラーニング、クラシフィケーション、クラスタリングなどに関する発明であって、以下の課題、構成、効果となっている場合、発明該当性の要件を満たすとされた。

 ➢ 課題:データ記憶量を低減し、データ伝送量を低減し、またはハードウェアの処理スピードを上げる等といったハードウェアの演算効率や実行効果をいかに向上させるか
 ➢ 構成:アルゴリズムはコンピュータシステムの内部構造と特定の技術的関連が存在する
 ➢ 効果:自然法則に合致するコンピュータシステム内部性能を改善する

 ・具体的な応用分野のビッグデータを操る発明であって、以下の課題、構成、効果となっている場合、発明該当性の要件を満たすとされた。

 ➢ 課題:具体的な応用分野のビッグデータ分析の信頼性または精度をいかに向上させるか
 ➢ 構成:クラシフィケーション、クラスタリング、回帰分析、ニューラルネットワークなどのデータマイニングにおいて自然法則の内在関連関係に合致する
 ➢ 効果:課題に対応する技術的効果を取得する

 ②発明該当性が否定される事例追加
 ・金融商品の価格予測方法に関する発明に対し、発明該当性が否定される以下の事例が追加された。この事例は、発明該当性が否定される際の論理付けの説明になり得る。

 ➢ 事例:金融商品に関連するビッグデータを操り、ニューラルネットワークモデルを利用して過去の一定期間内の金融商品の価格データと未来の価格データとの間の内在関連関係をマイニングする発明
 ➢ 理由:金融商品の価格動向は経済学規則に従い、履歴価格の高低は必ずしも未来の価格動向を決定することはできないため、金融商品の履歴価格データと未来の価格データとの間には、自然法則に合致する内在関連関係が存在しない。当該発明が解決する課題はいかに金融商品価格を予測するかであり、技術的課題ではなく、得る効果も技術的効果ではない。

 2)進歩性
 ①進歩性が肯定される方向に働く要素に対する説明追加
 通常、発明の進歩性を判断する場合には、2つ以上の技術的特徴が機能的に相互にサポートし合い、かつ相互作用の関係にあるのであれば、本発明において当該技術的特徴同士およびそれらの関係により達成する技術的効果を全体的に考慮すべきであると規定されている。今回の改正により、アルゴリズム特徴またはビジネス規則・方法特徴を含む発明に当該規定が適用されるときに考慮すべき要素が、追加された。

 ・アルゴリズム特徴を含む発明であって、アルゴリズムはコンピュータシステムの内部構造と特定の技術的関連が存在することにより以下のような技術的効果を奏する場合、アルゴリズム特徴が本発明に与える貢献を考慮すべきであるとされた。

 ➢ コンピュータシステム内部性能を改善した
 ➢ データ記憶量を低減し、データ伝送量を低減し、またはハードウェアの処理スピードを上げる等といったハードウェアの演算効率や実行効果を向上させた

 ・アルゴリズム特徴またはビジネス規則・方法特徴を含む発明であって、以下の要件のいずれかを満たす場合、当該ユーザ体験の向上を考慮すべきであるとされた。

 ➢ ユーザ体験の向上を奏することができ、当該ユーザ体験の向上は、技術的特徴によってもたらされた
 ➢ ユーザ体験の向上を奏することができ、当該ユーザ体験の向上は、技術的特徴、および、当該技術的特徴と機能的に相互にサポートし合い、かつ相互作用の関係にあるアルゴリズム特徴またはビジネス規則・方法特徴によって共同でもたらされた

【出典】JETRO「『専利審査指南』(2023)改正についての解説(四)」等

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