[特許/米国]IPR請求の1年の時期的制限は厳格に適用
IPR(inter partes review)は、米国特許を無効にする手続として、特に、特許権侵害訴訟に対する防御手段としてよく利用される。しかし、訴状が送達されてから1年以内に請求が必要という時期的制限がある(特許法315条(b))。
Facebook, Inc. v. Windy City Innovations, LLC事件では、期限内に請求され既に開始(Institution)された最初のIPRに、期限後に新たに請求された2つのIPRが315条(c)に基づいて併合(joinder)され、後の請求に含まれていたクレームのいくつかが無効になったことから、併合の適法性について連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)で争われた。
本事案では、特許権者であるWindy CityはFacebookが侵害するとするクレームを侵害訴訟の提訴時には特定しておらず、Facebookは830個のクレームの中から関連すると思われるクレームを自ら選んで最初のIPRを請求していた。その後、Windy Cityが争点となるクレームを特定した時点では、既に1年と言う期限を過ぎていた。そこで、Facebookは先行するIPRでカバーされていなかったクレームの無効を主張すべく新たに2つのIPRを請求し、315条(c)を利用して先のIPRへの併合を求め、それが認められていた。
CAFCは、315条(c)は、既に存在するIPRの当事者による併合を認めていないため、Facebookは、自ら請求したIPRに新たなIPRを併合できないと判断し、後の請求に含まれていたクレームのいくつかを無効にした特許審判部(PTAB)の判断を覆した。
この判決によれば、侵害訴訟の提訴を受けて被告は期限内にとりあえずIPRを請求しておき、訴訟の進行に合わせて期限後に足りない部分について新たなIPRを請求して併合する、という戦略が取れなくなる。
本事案では、申立てにより他の管轄裁判所へ訴えが移送されたことなどもあり、係争対象クレームの特定が遅れたという事情がある。したがって、提訴を受けた際には、係争クレームの特定に遅れを及ぼすような各種申立てを行うリスク、各裁判所や裁判官の傾向などを考慮し、1年の期限が経過するまでに係争クレームの特定を受けられるよう戦略を立てる必要がある。
315条(c) Joinder.̶
If the Director institutes an inter partes review, the Director, in his or her discretion, may join as a party to that inter partes review any person who properly files a petition under section 311 that the Director, after receiving a preliminary response under section 313 or the expiration of the time for filing such a response, determines warrants the institution of an inter partes review under section 314.