第2話.弁理士の仕事と、その将来性
弁理士の仕事に関して、日本弁理士会のホームページは次のように説明しています。
「特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産権を取得したい方のために、代理して特許庁への手続きを行うのが弁理士の主な仕事です。また、知的財産の専門家として、知的財産権の取得についての相談をはじめ、自社製品を模倣されたときの対策、他社の権利を侵害していないか等の相談まで、知的財産全般について相談を受けて助言、コンサルティングを行うのも弁理士の仕事です。」
さらに、同ホームページでは、①特許出願が拒絶査定とされた場合の不服審判の請求や、特許の有効性について争う無効審判の請求などの手続き、②拒絶査定不服審判や無効審判の審決に不服がある場合に、その審決の取り消しを求めて知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起すること、③東京/大阪地方裁判所における特許侵害訴訟において訴訟代理人または補佐人として法廷活動をすること、等も弁理士の仕事に含まれるという趣旨の説明をしています。
第1話で説明した通り、知的財産および知的財産制度の双方には十分な将来性があるとして、弁理士およびその仕事の将来性はどうなのか、ここで考えてみます。日本弁理士会のホームページに書かれた通り、弁理士の「主な仕事」は知的財産権を取得したい方のために代理して特許庁への手続きを行うことです。この「主な仕事」に将来性があれば、弁理士の仕事の将来性は盤石です。
例えば特許について、弁理士の主な仕事は発明の権利化業務(特許出願など)です。発明は技術的思想の“創作”であり、かつ、この創作物から知的財産権を創り出していくという点で、弁理士の仕事には二重の意味での創造的な性格があります。これは、同じ士業といわれる弁護士、司法書士や公認会計士、税理士の仕事には見られない弁理士の仕事に“固有の創造的性格”であり、第3話で説明するように人工知能(AI)では代替えできないクリエイティブな仕事です。
さらに、弁理士の仕事の創造的性格は、知的財産を素材として知的財産権という法律上の権利を創り出すプロセスで多層化します。つまり、発明者による発明・創作段階では点の広がり(または狭いエリアの広がり)しかなかった具体的な技術を、権利化プロセスの初期段階(出願準備段階の特許請求の範囲を練り上げる過程)で線的あるいは面的に広がりのある概念的な技術思想にまとめ上げていく活動(多面的な知的財産権の創造行為)であり、これが弁理士の主な仕事です。
どんなに素晴らしい発明でも、特許化する際の弁理士の腕前次第で特許としての価値は大きく異なってきますから、弁理士の果たす役割は非常に大きい、ということです。弁理士の仕事の本質は、専門家としての叡智とスキルを知的財産の権利化過程に注ぎ込み、新規有用な知的財産の法的カバーとして過不足のない権利を確立することにあります。そして、かかる独占排他権の創造行為により、発明(知的財産)の保護と奨励と利用に貢献し、もって更なる知的財産の創造と産業の発達に寄与するところに弁理士の仕事の本質があります。
したがって、弁理士が知的財産「権」の創造主体、すなわち、創作者や事業者が創り出した知的財産を素材として、知的財産権という法律上の権利を創り出すクリエイターとして活動している限り、弁理士の仕事の将来性は揺るがない、と言えるでしょう。