第1話.口述式試験にドレスコードはあるのか?
結論から申し上げると、口述式試験に既定のドレスコードはありません。そして、現状ではドレスコードが合否判断で問題になることはありません。では、ドレスコードがないのなら、どんな服装であっても良いのかというと、合格するためには相応の服装や身だしなみが必要になると考えた方が良いでしょう。
受験者の大半は、男性ならスーツにネクタイ着用、女性もスーツ姿が多いですが、ごく一部にノーネクタイの受験者もおられて、私も本番で遭遇した経験があります。中年の男性の方でしたが、その方は着席直後から右足を左膝の上に載せる形で足を組んでおられました。もちろん、これで減点したわけではありませんが、試験官の立場としては気分が良いはずはありません。自分では意識しなくても、質問の仕方や返答への対応がパターン的になり、いわゆる助け舟を出すタイミングが遅れがちになるのは、試験官といえども人間(感情の動物)である以上、やむを得ないことでしょう。
この方に、結果的に合格点を付けたか否かは申し上げませんが、その場の状況や雰囲気に見合った服装や立ち居振る舞いができないと、試験の場では不利になることは避けられないでしょう。特別にスーツを新調する必要は全くありませんが、ワイシャツにネクタイを締めてジャケットを着用する、という普通の身だしなみは、国家試験の口述式試験を受けるに際しての大人としての当然の心得であり、その意味では社会常識が試されていると考えた方が良い。そもそも、試験官が普通にスーツ・ネクタイ姿でいるのに、受験者がカジュアルファッションでは釣り合いが取れないでしょう。
口述式試験の実施時期は、暑さ対策で服装や着こなしがラフになりがちな夏ではなく、秋が深まった涼しい頃ですので、あれこれ身だしなみで迷うこともないはずです。
緊張すると冷や汗が噴出してくる人、ガタガタと貧乏ゆすりが始まる人、言葉が詰まって呂律が回りにくくなる人、さらに無意識に腕組みして斜めに構えて話し始める人もいます。このような仕草は試験本番の緊張感から生じるものと思われますが、この仕草そのもので減点されることはありません。
しかし、これが原因で受験者自身が実力を充分に出し切れない状況が生まれるのは不幸です。この「おそれ」のある人は、試験本番で緊張しないための準備を充分にやっておくべきでしょう。そのような「準備の王道」は条文再確認から始まる基本事項の復習と、口述練習会をこなして場数を踏んでおくことでしょう。これらについては、後日、解説します。