第3話.基本に忠実に解答すれば合格できる!
今回が、論文試験本番前の最後の記事となります。前回に引き続き、まずは、過去の「ほんやら日記」を再録します。
「ほんやら日記」からのピックアップ
WEDGEという月刊誌を読んでいたら、中日ドラゴンズの山本昌投手の記事がありました。阪神ファンとしては“こういう試合があったので好きになれない!”のですが、「基本に忠実に」という話に魅かれました。
プロで開花するキッカケになった指導者からの助言は、「ストライクを投げろ」、「できるだけ前でボールを放せ」、「低めに投げろ」、の3つだけだったとか。これは、知財の仕事はもちろん、弁理士試験にも共通する…「物事の基本」であると思います。
論文式の試験日まで残り10日となり、追い込みの時期です。創英の受験生は、試験休暇に入る人も出ています。この時期こそ、「基本が大切」であり、ちまたに出回っている予想問題なんて気にしてはダメです。
例えば、昨年あたりから特許庁は先使用権の利用を進めており、そういうところから「今年は先使用権がヤマだ!」
ということで、様々な事例の予想問題が出ているかもしれません。でも、「そういう予想事例問題は気にしない」のが合格の秘訣です。
理由は、
第1に、事例の予想問題が本番でズバリ出る確率は、あまりにも低いこと、です。
「先使用権の範囲内での何らかの問題」ということなら、一定の確率で出題の可能性があります。しかし、「事例の予想問題が当たる」ことは非常に稀であり、そのようなレアーなケースを狙って本番直前の時間を消費するのはマイナスです。
第2は、仮に先使用権の事例が出ても、その内容は微妙に外れていること、です。
事例の予想問題をやり過ぎていると、本番で「似たような問題が出たときに、無意識に予想問題の解答イメージに引っ張られて、題意から外れた解答をしてしまう」ということです。これが原因で、「予想が当たったのに落ちる」人が多いのではないでしょうか。ということで、「基本に忠実な勉強」をしましょう。「先使用権が今年のヤマ」であるなら、その発生要件や法律効果、変動などを、条文を参照して整理し、“どのようなタイプの問題が出ても、それなりに解ける”というような準備をしておくことです。
そのとき、「条文を丹念に参照する」ことと、「条文の構成を、キチンと理解しておくこと」が大事です。
その理由は、
第1に、発生要件や法律効果、変動などは全て条文に書いてあること、第2は、条文は本番で参照できるので、条文の構成を理解していれば問題を読んでから条文を読むことで、解答の糸口が見出せること、です。ともかく、試験に合格するには基本が大切です。弁理士試験は、予想問題を当てた人が合格できる試験ではありません。弁理士試験は、基本的な法律解釈を問う普通の事例の問題を、基本に忠実に解答すれば合格する試験です。
肩のチカラを抜いて、「自分は合格できる!」と暗示をかけて、頑張ってください。
弁理士試験は難関の国家試験ですが、「基本に忠実に解答すれば合格できる」という話はよく聞かれます。一種の決まり文句ですが、これには一つの条件があります。“条文と逐条解説をベースとする勉強法で短答式試験に合格できた論文受験者”であれば、基本に忠実に論文問題に解答すれば合格できる、ということです。
論文の試験問題は一般的に長文であり、2ページにわたる場合もあります。問題文が長文になっているということは、問題文を素直に読み取って、法律の条文に定められた要件や規範を当てはめていけば、合格点が取れるということです。問題文から読み取れない事柄や、設問で問われていない事項を論じる必要はありません。
ところが、受験者の論文解答には、問題文から外れた内容をダラダラと書くものが少なくない。本試験の問題文に「設問で聞かれていないことを検討する必要はない」という趣旨の一文が添えられることがあるのは、正解の筋道から外れた無意味な解答文(加点狙いの無駄な作文?)が少なくないことを示唆しています。
論文試験の問題文には、無駄な文章や余計な語句は含まれていません。文章の一言一句が全て解答に必要なものと心得て、素直に読み取る必要があります。その上で、法定の要件や規範を当てはめて設問に答えることになります。
問題文は一般的に長文ですが、正解の解答文はコンパクトにまとまることが少なくない。もちろん、設問中で制度の趣旨や立法理由を問われたときは、やや長文の解答文となりますが、一般的にはコンパクトに記述できます。それゆえ、解答文の作文自体に必要な時間は、通常は長くならないですから、作文に取り掛かる前に、問題文の分析、設問に対する解答の要点の抽出、根拠条文のピックアップなどを行うべきです。
隣の受験者が早々に解答用紙に書き始めた様子を目にすると、妙に焦る気持ちが出て問題文の分析等が不十分なまま作文を始めたくなります。自分の時間配分のペースを守りながら、自信を持って解答すると良いでしょう。
このような時間配分のコツや、問題文の分析・解答の要点の抽出・根拠条文のピックアップなどの要領を自分なりに確認する目的で、受験予備校で模擬試験を受けてきた方も少なくないでしょう。その成果を、ぜひとも本番で活かしてください。
最後に一言。今年(2019年)は特許法と意匠法で大きな法改正がありました。特に意匠法は、意匠の定義(2条1項)の大きな改正を含んでおり、一部改正というより大改正と言って良いでしょう。これら改正の対象となった条文周辺は、論文で問われるかもしれないと考えている人も少なくないでしょう。改正条文の辺りが試験で問われやすい(特に趣旨、理由の解説を求める問われ方)のは事実ですが、改正法自体は施行されていませんので試験の範囲外です。もしも改正対象の条文周辺が出題されたなら、その点は混乱しないように解答すべきです。
論文試験の本番まで、残り一週間です。
貴方の頭上に、幸運の女神が舞い降りることをお祈りします。