弁理士試験について語る

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第2部 短答・論文・口述式試験対策各論第2章 論文試験

第2話.論文試験の「初」受験者に有利なところは?

2019/06/03 公開

今回のテーマは、論文式の「短期決戦に活路があるか否か?」です。まずは、過去の「ほんやら日記」を再録します。

「ほんやら日記」からのピックアップ

今年の弁理士短答式の試験(一次試験)合格者は2678名だそうです。
…多いですね。私の受験時代の全受験者数と同程度です。このくらいの人数規模の試験になると、必然的に「合格の秘訣は変わる」と思います。
そこで、ちょっと考えてみると…

まずは、「短期決戦に活路があるか否か?」です。言い換えると、「今年は短答対策だけをやってきた。論文の勉強はまだまだ…」という人に、「合格の可能性はあるか否か?」という問題です。

結論から言えば、「論文対策なるものを全く手がけてない人も、充分に合格可能性あり!」というのが今どきの試験傾向でしょう。
何年も前の「論文試験を一週間かけてやっていた時代」では、“論文テクニック”が必要でした。しかし今は、問題に対する「解答を書くだけの日本語力」があれば良い。
つまり、「論文を作成するための勉強や準備」の必要性が大幅に低下しており、「問題を正確に把握し、解答を導くチカラがあれば良い」ということです。もう少し言えば、「短答合格に必要なチカラ」と、「論文合格に必要なチカラ」が似通ってきた、ということです。

ということで、「今年は短答対策だけをやってきた。論文の勉強はまだまだ…」という受験初心者も、「今年こそは論文を通りたい!」という受験のベテランも、「合格の可能性は、ほとんど変わらない」ということです。むしろ、受験初心者は余計なことを考えない(考えるだけの知識がない?)ので、「本番で題意把握をミスしない」ということから、実質的には有利と思います。

受験のベテランは…色々なことを知っている(勉強し過ぎ?)がゆえに、本番で考えすぎて、「書かなければ良いことをゴチャゴチャ書いて墓穴を掘る」ということが少なくない。本番で「ゴチャゴチャ書いてはダメだ!」と思っていても、受験のベテランは「不安感」にさいなまれ…結局はゴチャゴチャ書いてしまうのです。

ということで…「今年は短答対策だけをやってきた。論文の勉強はまだまだ…」という「今年、初めて論文を受ける」人は、“チャンス!”ですので、短期決戦で活路を見出してください。

上掲のブログから汲み取って頂きたいのは、
・法令に則って設問に解答すれば合格
・失点をなくせば加点がなくても合格
・頭でっかちの尻切れトンボは不合格
という3点です。
これらを順番に解説しましょう。

法令に則って設問に解答すれば合格

弁理士法第10条第2項には、論文式による試験科目が「工業所有権に関する法令」と明記されているのですから、論文式試験は“法令に則って設問に解答すれば合格できる”のは当然です。
問題文の設例に法令の規準や規範を当てはめて解答するわけですから、根拠条文は具体的・直接的に明示することが不可欠です。例えば、特許発明の技術的範囲の解釈を問う問題の解答で「願書に添付した要約書」に言及するときは「70条3項」と明記すべきであり、単に「70条」と書いても答えになっていません。
ここで、根拠条文「70条3項」の正式表記は「特許法第70条第3項」ですが、特許法の問題であれば単に「70条3項」と書けば十分です(時間節約のために略式記載は必要なこと)。ただし、実用新案法の問題に対する解答の場合は、「26条で準用する特70条3項」と書くべきであり、単に「70条3項」と書くと実用新案法には実在しない条文を根拠にした、という結果になります。

失点をなくせば加点がなくても合格
問題文をよく読み、問われていること“のみ”に対して正面から答えることで合格できます。巷で言われる〝加点対象”のようなものに惑わされず、設問に対してコンパクトに解答するのが合格の第一歩です。上掲のブログ記事(2007年06月07日付)において、太字で強調したところに留意してください。

頭でっかちの尻切れトンボは不合格
この「頭でっかちの尻切れトンボ」の意味は、ご理解いただけるでしょうか。立場上、本試験における体験として解説するのは憚られますので、私が答案練習会の講師をしていた時の体験で解説します。
例えば、甲の特許出願に係る発明を乙が実施している場合、乙が有する先使用権の成立要件などを5つの設問(1)~(5)として問う事例問題において、設問(1)に解答する前に、先使用権の定義や制度趣旨を滔々と述べ、その後で設問(1)から順番に解答していくような答案をたびたび見かけました。このような答案は、設問(3)か(4)辺りで息切れし、設問(5)の最後まで解答できていないことが多かった。
これは解答のための時間及び労力の配分ミスであり、時間切れで充分に書ききれなかった設問(4)、(5)の減点、失点は少なくない。そして、この減点、失点分を定義や制度趣旨の論述による加点(?)分でカバーできたかというと、残念ながらカバーできていません。むしろ、定義や制度趣旨の説明は問われていないので、その論述による加点分ゼロと考えて良いでしょう。
「頭でっかちの尻切れトンボ」の答案は、まさしく竜頭蛇尾(頭は竜のように立派で、尾は蛇のしっぽのように尻すぼみになること。)であり、不合格になる可能性が高いでしょう。

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プロローグ

第1部 王道を行く弁理士試験勉強法

第2部 短答・論文・口述式試験対策各論

第1章 短答試験

第2章 論文試験

第3章 口述試験

第3部 受験生活を乗り切り、不合格を乗り越える

第4部 弁理士を志望している方に「本音ベース」で贈る言葉

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