第6話.短答試験本番の当日の注意点
いよいよ短答式試験の本番が近づいてきました。本番試験の、その当日の注意点を申し上げましょう。
先ずは、最近の弁理士試験では、その重要度が論文式から短答式にシフトしていますから、ここを弁理士試験の天王山と心得てください。この辺りの話は、第1部の第5話と第6話で詳しく解説したので繰り返しません。
試験中は、自分自身のマインドが安定していることが何よりも重要であり、自分なりに“マインドを安定させるコツ”を見つけておくのも良いでしょう。
例えば、試験開始ですぐに問題に取り組むことはせず、先ずは全てのページを1問につき数秒の時間をかけて縦覧しておくというのは、解答ペースの見通しを付けつつ、マインドを落ち着かせる意味でも効果的です。
また、第1問から順番に解いていく必要もありません。暗記しているか否かが勝負の問題(どちらかというと文章が短い問題)を先に解いて、事例的な設問を分析して解答を考える時間が必要な問題(どちらかというと文章が長い問題)を後回しにするのも、時間配分という点で効果的です。
上記の点に留意した上で、試験当日の注意点は、下記の4つです。
1.試験の話をしない。
2.早めに到着する。
3.雑音にイライラしない。
4.見直しは自信のある問題からやる。
以下、これらを私自身の体験も含めてお話しします。
「ほんやら日記」からのピックアップ
≪当日注意1.試験の話をしない≫
試験会場で顔見知りに会ったら、「おはよう!」と挨拶して、その後は無視しましょう。問題の出しっこや、不明点を教えあうとか、そういうことは止めましょう。気持ちを不安定にさせるだけで、良いことは何もありません。
話しかけられても、「いま、取り込んでいるから…」とか、テキトーに答えて無視しましょう。
今まで学んできたことを復習することと、マインドを安定させることに徹しましょう。人間関係を大事にして試験会場で知り合いの話に付き合って時間を費消する、なんて止めましょう。
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≪当日注意2.早めに到着≫
できれば試験開始の1時間以上前に入る。そして、前日に用意した「1時間で見直しできる資料」に目を通しましょう。
周囲の雑音をシャットアウトするために、ヘッドフォンをつけてクラシックを聞いたり、耳栓をつける、というのもお勧めです。ノイズキャンセラー付のヘッドフォンも便利です。
そのとき、知り合いに声をかけられたら、「ヘッドフォンを外さない」で、テキトーに応対して、あとは無視して残り時間を“見直し”に使いましょう。
知り合いとの会話が5分、10分と続くと、それ自体が無駄な時間となります。せっかく前日までの直前対策で準備した「1時間で見直しできる資料」が活用できません。さらに、そこで「時間を浪費した」という気持ちが生まれてマインドが不安定になりやすいので、二重の意味でマイナスです。
人間の記憶は、いったん覚えた後の時間経過とともに指数関数的に忘れていきますから、直前の復習は極めて重要です。直前の10分間の復習は、一か月前の一日分の勉強に相当すると言っても良い。この貴重な時間を大事にしましょう。
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≪当日注意3.雑音にイライラしない≫
試験が始まったら、周囲の雑音にイライラしないことが大切です。
例えば…
・後ろの席に、落ち着きの悪い奴が座って、ガタガタと音を立てる、
・前の席に、ゴホゴホと頻繁に咳をする奴がいる、
・隣の若い女性がミニスカートで、ちょっと見えそうになる、
なんてのに惑わされてはダメです。
集中力を欠いて試験を受けたら、「確実に2,3点は下がる」と覚悟してください…それくらい集中力は大切です。
私は1回目の受験で短答式(当時は多枝選択式)合格、論文不合格でしたが、2回目の受験では短答式不合格でした(3回目の受験で短答・論文・口述の全てで合格)。この2回目の短答不合格の原因は、根本的には勉強不足と短答試験を甘く見ていた点にありますが、付随的な原因として「背後の席からの雑音にイライラした」という事情と、私自身の“禁断症状”問題がありました。
試験開始後、暫くすると、背後の席の受験生がボソボソと小声でしゃべり始め、それが延々と続いたのです。何を話しているかと言えば、問題文を最初から最後まで小声で読んでいて、それが耳に入ってくるのです。
試験後にわかったことですが、背後の受験生は本来の受験生ではなく“試験問題の再現屋”と呼ばれる業者さんでした。当時は試験問題が非公開だったので、受験関係の出版社等は受験生として再現屋を潜り込ませて、テープレコーダーに問題文を録音して再現し、本試験の「再現問題集」として出版・販売していました。私自身も、この再現問題集を購入して重宝していたわけですが、その再現屋がたまたま私の背後の席だったということです。
抗議の意を込めて肘でドンと後ろの席を叩くと、少しの間は静かになるのですが、やがてまたボソボソと小声が聞こえてくる、という状態でした。この小声を無視しようとも努力したのですが、話している内容が興味のないテーマだったら気にならなくても、聞こえてくるのはまさに短答式の試験問題そのものですから、どうしても気になってしまいます。
これに輪をかけたのが、私自身の“禁断症状”でした。一日当たり30本から40本のタバコを吸っていた愛煙家の私には、我慢しても禁断症状が出てきてしまいます。背後の席の雑音と、タバコの禁断症状から襲ってくるストレスが、私のマインドを不安定にしたのは言うまでもありません。
ということで、受験者の皆さんには、万一の事態に備えて、なるべく高性能の耳栓を用意する一方、愛煙家の方には経皮吸収ニコチン製剤を貼っておくことをお勧めします。
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≪当日注意4.見直しは自信のある問題から≫
全問の解答が終わったら、試験終了まで見直します。そのとき、見直しは「自信のある問題からやる」ことが大切です。自信のある問題は確実に得点しておくことが大切であり、ここで取りこぼしがあると、合格は遠のきます。
そのためには、最初に解答するときに、自信度に応じてA,B,Cなどのランクをつけておくと良い。そして…全問の解答が終わってA(自信あり)の問題が例えば7割を超えていたら、Aの問題だけを見直せばよい。
「第4話.短答試験本番での心得」のところで、心得の2番目として、解答が一巡して残った時間で見直しをしたときに「迷ったら最初の直感でいく」ことが大事と書きました。見直しは自信のある問題から取り組むべきですが、見直しで迷っても安易に解答を変えるべきでない点には注意してください。
…ということで、私からの短答式試験のためのアドバイスは「これでおしまい」です。
このアドバイスが、「あと一歩で短答式試験の合格ラインに届く」という人の役にたちますよう、お祈りします。