弁理士試験について語る

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第1部 王道を行く弁理士試験勉強法

第6話.短答式を制する者は弁理士試験を制する!

2018/10/17 公開

第5話で、データを参照して説明した通り、弁理士試験の天王山が短答式にシフトし、短答式の合格者が減少し、しかも、短答式の合格率が低くなっている、というのが昨今の現実です。この現実に直面して、①長期戦は避けて、②苦労や犠牲は最小限にして、しかも、③最後には必ず合格したい、という受験者は、どのような戦略と戦術で弁理士試験を攻略すれば良いのでしょうか。
結論から言えば…
短答式/論文式対策を統合した勉強法が良いでしょう。短答式と論文式で勉強方法や教材等を分けるのではなく、短答式のための勉強が論文式のための勉強になってしまうような短答式のための勉強を心掛ける、ということです。つまりは、青本を基本書として条文を把握し、その「趣旨」と「字句の解釈」に記載されたコンテンツを条文と関連付けて理解するということであり、例えば、短答式の過去問をやる時でも常に青本に立ち返って条文、趣旨および字句の解釈を読み込み、青本から知財法のリーガルマインドを理解して論文式対応力を強化していくということです。
この基本に忠実な青本ベースの勉強法によって短答式に合格することは、決して難しくはありません。
この場合、特に留意したいのは、短答式を“余裕の高得点で合格する”ということです。短答式は合格最低ラインでクリアできれば“それで良し”とするのではなく、最低ラインを少なくとも3点、望ましくは5点、さらに望ましくは7点と超えていくような高得点でクリアしたい。基本に忠実な勉強で短答式を高得点でクリアした受験者であれば、論文式試験の四法の問題(特に、これらの中核をなす事例問題)は特別に答案練習などを経験しなくてもスムーズに解けるでしょうし、合格点を取ることも難しくないでしょう。これを超える高得点で短答式をクリアできた人は、論文式でも合格点を取る確率が高い、ということですが、この辺りの事情は後述します。

「ほんやら日記」の記事からピックアップ(その5)
弁理士試験 勝利の女神が微笑むときは…。

 

弁理士試験の論文式試験が近づいてきました。創英メンバーの受験者の試験休暇届けに、毎日のように押印しています。今年も、短答式試験の合格者が出て、特許メンバーと商標メンバーを合計して、二桁には到達しなかったですが、二桁に近い数名が論文試験に挑戦します。

「来年も試験受けるなんて面倒くさいからよぉ、今年で決めろっ!」と言って休暇届に押印しています。5回目受験であろうと、10回目受験であろうと同じ「今年で決めろっ!」。受験年数が多い人には、「いつまでも受験なんかにカカズリあってんじゃないのっ!」。今年、初挑戦で論文に進んだ人には、「さっさと受かってしまえっ! 受験長老の真似なんか、やめとけっ!」と言っています。

今年、論文試験を受ける人は、一部を“まぐれ”で論文に進んだ人を除いて、「ほとんど同じスタートラインに立っている」と思います。最後の追い込みの三週間、ここで諦めずに、最後の最後まで、死力を振り絞って闘い抜いた人には、きっと合格の女神が微笑む。少しでも弱気になったり、最後の手前で諦めた人は、きっと落ちる。
試験や戦いは、そういうもの。
論文試験を受ける人は、最後まで死力を尽くす…そうすれば合格の光明が見えてくる。

アメリカ大統領選挙の民主党予備選で、ヒラリー・クリントンさんは、誰もが認める劣勢にありながら、未だに諦めていない。「ひょっとしたら、歴史的な大逆転があるかもしれない」なんて…思ったりしませんか?
結果的に負けても良いのです。でも、「負けが100%決まるまでは絶対に諦めない」というのは、試験でも選挙でも同じ。
戦いの鉄則です。
試験が終わった瞬間に、精根尽きて倒れ伏すくらいに、死力を尽くして頑張れば、きっと合格の女神が迎えに来てくれます。

上記の「ほんやら日記」は2008年06月05日の記事ですから、アメリカ大統領選挙の民主党予備選で、ヒラリー・クリントンさんがバラク・オバマ大統領と戦った時のことが書かれています。それはともかく、試験合格を“本気の本気”で目指す人は、最後の最後まで死力を尽くすことが大事であり、それが試験合格の一番の秘訣です。

 

今回の第6話のタイトルは、「短答式を制する者は弁理士試験を制する!」となっていますが、単に「短答式に合格すれば論文式にも合格できる」と言っているわけではありません。青本をベースとした基本に忠実な勉強をして、短答式の合格ラインを数点以上の余裕をもってクリアした受験者であれば、各法(特に意匠法と商標法)の重要項目を解説問題対策用に整理しておくだけで論文式の試験準備は十分であり、それ以外の特別に論文試験を意識した勉強をやらなくても論文式に合格できる、という意味です。
これを平成29年度と平成30年度の論文式問題で確認します。論文式問題の出題形式には、大別すると、①事例を示して、その事例からいくつか設問し、コンパクトな回答や簡単な解説を求めるタイプの問題(いわゆる「事例問題」)と、②法律上の用語や制度概念を示して、その制度趣旨や内容解説を求めるタイプの問題(いわゆる「解説問題」)とがあります。平成29、30年度の論文問題を分類すると、下記の通りです。
・・・・・・・・・・・・・・・
[特許・実用新案]
平成29、30年度のいずれも問題Ⅰ,Ⅱの双方とも事例問題(100点)
[意匠]
平成29、30年度のいずれも問題Ⅰは解説問題(40点)、問題Ⅱは事例問題(60点)
[商標]
平成29年度の問題Ⅰは解説問題(35点)、問題Ⅱは事例問題(65点)
平成30年度の問題Ⅰは解説問題(40点)、問題Ⅱは事例問題(60点)
・・・・・・・・・・・・・・・
<事例問題>は、諸々の条件が定められた事例に対して法律の適用要件を当てはめて解答を導く問題ですから、法律の条文の趣旨や適用範囲、適用要件に対する正確な理解と、事例への当てはめ能力が必要になります。このような事例問題の解答能力は、短答式の問題を解く能力と共通しますから、基本に忠実に短答式の勉強を積み重ねて短答式試験を高得点でクリアする実力を身に着けていれば、特に論文式のための勉強をしなくても合格点を取ることができます。なお、事例問題と解説問題の配点にも留意すると良いでしょう。解説問題は意匠と商標で出題されていますが、事例問題の方により多くの配点がされていますから、論文式試験の中核は事例問題にあると言えるでしょう。

<解説問題>は、問題文に示された法律用語や制度概念を整理して解説する問題ですから、これらを事前に整理して本番で出力できるように準備しておくことが必要です。例えば、平成29年度の商標の問題Ⅰは、「商標登録の異議申立制度と無効審判制度の異なる点について、説明せよ。」となっており、平成30年度の意匠法の問題Ⅰは、「意匠法において、一つの意匠として認められるものを、意匠法第2条その他の関係する条文に照らして説明せよ。」となっていますが、これらは論文式対策として事前に整理して記憶してあれば、短時間で合格点をとれる解答が作文できます。この場合、短時間で解説問題の解答・作文を済ませることができることが大事であり、これができれば事例問題の方に多くの時間を割くことができるので、合計点をアップさせるのに非常に有利になるのは間違いありません。

これまでの話を総合して、弁理士試験の短答・論文式の双方を攻略するために大事なポイントを2つだけ上げておきましょう。第1は、青本をベースとした基本重視の勉強により、短答式を高得点でクリアできる実力をつけることです。この場合、特実意商の四法の短答式で高得点を挙げる実力があることが重要であり、そのような受験者は、特実意商の論文式の事例問題で合格点を取るポテンシャルを持っていることに留意すべきです。第2は、論文式の解説問題のための対策として、重要な制度の趣旨や特徴、内容をコンパクトに整理しておくということです。これは論文式の事例問題の解答にかける時間をできるだけ長く取るための対策でもあります。

なお、数年前に口述式試験の不合格率が一時的に高まった時期がありましたが、弁理士試験の天王山が口述式ではないことは明らかでしょう。そもそも口述式試験は、試験日が異なっていれば試験問題も異なりますので、この試験を厳しくしすぎると受験者相互間の公平性が損なわれることになります。また、口述式試験は一人の受験者と二人の試験委員だけで行われますので、受験者としてはどの試験委員に当たるかの運・不運に左右されやすく、しかも密室での試験ですので何らかの問題があっても検証不能です。試験の公平性の観点からいえば、短答式が最も公平な試験であり、口述式は最も公平性に問題がある試験、ということになるでしょう。

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プロローグ

第1部 王道を行く弁理士試験勉強法

第2部 短答・論文・口述式試験対策各論

第1章 短答試験

第2章 論文試験

第3章 口述試験

第3部 受験生活を乗り切り、不合格を乗り越える

第4部 弁理士を志望している方に「本音ベース」で贈る言葉

エピローグ

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