第4話.中級者は青本を繰り返し通読すべし
初級/基礎レベル(短答合格まで少なくとも数点足りないレベル)を超えた中級者の独習は、青本を基本書として何度も繰り返し読むことです。通読は2回、3回といわず、5回でも10回でも繰り返すことが大事です。勉強でもスポーツでも習い事でも、基本を教わった後は、適宜にコーチを受けながら、ひたすら同じ練習を繰り返すことで上達していきます。通読を繰り返すことで、短答試験の得点力は着実にアップします。
青本を通読する際に、注意すべき点が2つあります。
注意点の第1は、まずは条文を読み、次に「趣旨」や「字句の解釈」を読み、不明点が出たら条文を確認することです。条文軽視で解説文を中心に読んでいると、知財法の理解が産業政策上の“制度としての理解”に留まってしまい、“法律としての理解”が疎かになりがちです。喩えて言うと、知財法の理解がモヤッとした“わかったつもり”のレベルになってしまいます。これが、条文を軽視した勉強法の盲点です。
注意点の第2は、ラインマーカーや書き込みは躊躇することなく行うことです。ラインマーカーを引くこと自体が記憶し理解するステップの一部です。ただし、何度か通読してマーカーや書き込みが目立ってきたら、その青本は参照用資料として脇に置き、通読用の新しい青本を買うことが大事です。真っ新な青本で気分もリフレッシュして、新たにラインを引き、書き込みをして、繰り返しの読み込みを再開することが秘訣です。この話をすると、「青本があるのに新しい青本を買うのは勿体ない」という人がいますが、試験の合否を左右すると考えれば、取るに足らないコストです。
青本を延々と通読するだけでは芸がない、試験の最初のハードルである短答対策と絡め勉強がしたい、という人には、短答式の本試験の再現問題に取り組み、問題/解答枝を読み解きながら青本をチェックして該当箇所を読み込む、という勉強法をお勧めします。その場合、答練会の問題ではなく、必ず本試験の再現問題をやること、そして、問題集の解説を読んで終わらせるのではなく、必ず青本の該当箇所に立ち返り、条文を参照しつつ「趣旨」や「字句の解釈」を読み込むことが大事です。
「ほんやら日記」の記事からピックアップ(その3)最強の受験勉強法 今年も「あと1点」に泣いた人へ!
弁理士資格試験の短答式試験で、「あと1点、足りなかった」という人は、今年も、特許事務所や企業や大学に、たくさんいるようです。今年が最初の受験、という人は、「残念だけど、よく頑張ったね!」ということで済ませられます。しかし、昨年ないし一昨年(以前から!?)に引き続いて…という人は、ショックですね。
その当事者には、“とても失礼な話”になるかもしれませんが、ちょっと本音を書きます。2年連続、3年連続で、「自分としては頑張ったけど、あと1点、あと2点に泣いた」という人は、
以下…
タイプ1.そもそも試験に向いていない人、
タイプ2.自分では頑張っている“つもり”なだけで、周囲から見ると頑張っていない人、
タイプ3.頑張っているが、その“頑張る方向”が間違っている人、
タイプ4.頑張る方向は間違っていないが、頑張る手法(頑張り方?)が間違っている人、
…のいずれかです。
私の本音で、タイプ1~4をさらに詳しく言うと…≪タイプ1≫ そもそも試験に向いていない人。
こういう人って、必ずいます。真面目に頑張っているのに、試験で良い点が取れない。
こういう人に中には、“自然確率未満の点しか取れない”というのもいます。短答式試験は5枝から1枝を選ぶのですから、でたらめに解答しても自然確率で50点満点中の10点は取れる!…ハズです。
ところが、2年、3年と勉強しているのに、これ未満の点数しか取れない人がいる。半端に知識があるから、正解を外して回答する…結果、自然確率未満の得点となる。冗談みたいですが、本当ですよ…こういう人は、そもそも“試験に向いていない”ので、進む道を変えるべきです。人には得手と不得手がありますから、得手を見つけて伸ばすべきです。
逆に…
不得手であることがわかったら、パッと試験は棄てる。企業の知財部や特許事務所で働いていても、パッと試験は止める。仕事と資格は別物。弁理士試験のことなんか、綺麗サッパリ忘れて、新しいことに挑戦しましょう。≪タイプ2≫ 自分では頑張っている“つもり”なだけで、周囲から見ると頑張っていない人、
こういう人は、けっこう多いですね。人間は誰しも、自分に甘く、周囲が見え難い!
周囲の人は、おおむね優しく、厳しいことを言ってくれません。たいして頑張ってもいない人に「落ちたの? そう…残念だったね。 あんなに勉強したのに…気を落とさないで」なんて慰める。そして「大丈夫…今の調子で勉強すれば、来年は必ず合格するよ!」なんて励ます。
まったく、無責任極まりない!2年も3年も勉強して受験して、それでも短答式試験すら合格できないのに…そんな人に「今の調子で勉強すれば、来年は必ず合格するよ!」だなんて、おかしいですよ…アホかっ! こういう“周囲の甘やかし”、“無責任な慰め”が、「自分では頑張っている“つもり”なだけで、周囲から見ると頑張っていない人」を拡大再生産させているのです。
≪タイプ3≫ 頑張っているが、その“頑張る方向”が間違っている人、
このタイプは、かなり多いのではないでしょうか。特に、最近は増えている!?
弁理士試験は法律の試験です。法律は条文から成り立っています。…ならば、弁理士試験の勉強は条文の勉強でなければなりません。
条文には制定の趣旨があり、立法の理由があります。条文は文章であり、そこから意味が読み取れます。…ならば、条文の勉強は“制定の趣旨と立法理由を理解する”ことを背景として、条文という“文章の意味を読み取る”チカラを身につける勉強でなければなりません。条文を離れると、弁理士試験のための勉強は、単なる社会科としての“知的財産制度の勉強”に成り下がり、弁理士試験で理解度が試される“法律の勉強”ではなくなります。その結果、制度の知識はあっても、法律の理解が足りないから、試験で“問題が解けない!”ことになり、“短答でも論文でも点が伸びない”ことになります。
レジュメやサブノートは便利かもしれませんが、それらは所詮、単なる“出来合いの制度の整理集”に過ぎません。
ましてや…自作のレジュメやサブノートならば自分の魂も込められますが、市販のモノや他人のコピー物は他人の魂の抜け殻しか入っていないのですから、“自分の役に立たない”ことを知るべきです。市販のレジュメやサブノート、他人のコピー物だけで勉強して1,2年で最終合格した…という人も少なくありません。昔でも、そういう人は少数ですが、実際にいました。試験上手な人…一種の天才です。普通の人が真似するのは、お勧めできません。
ましてや、2年連続、3年連続で、「自分としては頑張ったけど、あと1点、あと2点に泣いた」という人は、絶対に真似してはいけません。その理由は…わかりますよね。もし、わからなかったら…あなたは≪タイプ1≫の変形だと思いますから、生きる道を変えましょう!≪タイプ4≫ 頑張る方向は間違っていないが、頑張る手法(頑張り方?)が間違っている人、
頑張る手法は、人それぞれです。万人共通の秘策はありませんが、受験生活が長くなると、勉強の手法もマンネリ化するので、その対策が必要でしょう。
対策を一つだけ、ご紹介します。まず、「今年も「あと1点」に泣いた人」にお尋ねします。
<質問1>
試験準備/勉強では、法令集を座右に置き、基本書や逐条解説の勉強を重視しましたか?
<質問2>
昨年の試験勉強で使った基本書や逐条解説は、そのまま今年の試験勉強でも使いましたか?
<質問3>…※質問2で「イエス」の人にのみ尋ねます。
その基本書や逐条解説には、ラインマーカーや鉛筆でマーキングがしてありましたか?質問1がイエスでないと、来年も合格は難しいですよ。基本から外れている。特に、今年も「あと1点」に泣いた人は、まず無理です。
考え直しなさい!質問2がイエスで、質問3もイエスの人は、やっぱり来年も合格は難しいですよ。その理由は…基本書や逐条解説に書き込まれたラインマーカーや鉛筆でのマーキングが、あなたの“知的成長を阻害する”のです。特に、カラフルなラインマーカーは最悪。
基本書や逐条解説は、毎年、新しく購入して下さい。そして、まっさらな気持ちで、まっさらな書き込みのない基本書や逐条解説で勉強して下さい。
そのかわり、勉強中は、「基本書や逐条解説にはコメントを書き、鉛筆で線を引き、マーカーを使う」ことが大切です。綺麗に使ってはいけません。なぜなら、“コメントを書き込む”“マーキングをする”という“行為自体が勉強”だからです。コメントを書き込む、マーキングをする、という行為の過程で脳細胞を働かせて、法律を理解し、結果として記憶に留めているからです。だから…“基本書や逐条解説は汚くなるように使う”けれども、“少なくとも年に一回は新品と交換して、古いのを棄てる”ことが大切。
なぜなら…既に書き込まれているマーキングは、その後の知的成長を阻害する【過去の勉強の残りカス】でしかないからです。この勉強法は、単に、「少なくとも年に一回は基本書や逐条解説を新規購入する」という簡単なものですが、意外と効果があります。そのほかにも…色々とありますが、長くなるので、この辺で止めます。
ともあれ、今年の短答式試験で、「昨年に続いて“あと一点”で涙を呑んだ」人は、「心機一転で、がんばるぞー!」と今すぐは思ったりしては…ダメですよ!しばらくはボケーッとして、テキトーに(めいっぱい?)落ち込んで、悔しさを溜め込んで、…「その気」になるまでは勉強しないで、来年の試験のための鋭気を養うために遊び溜めして下さい。
大切なのは、戦略とメリハリです。
青本の読み込みベースの勉強を、ただひたすら独習だけでやっていると、受験生活がマンネリ化したり、勉強中の疑問点や不明点が解決できなかったりしてスランプに陥りがちです。そういう場合、ペースメーカーの役割を持たせるために各種の指導講座を利用すると、受験生活にリズムが生まれて勉強がはかどります。また、独習中の疑問点や不明点も解決できるので、優れた講師の指導する受験講座は特に重宝します。職場や知り合いの受験者仲間(真剣に勉強している仲間)で勉強会を作り、青本を輪読して疑問点や不明点を議論するのも好適でしょう。
ただし、
中級者の勉強の基本は、青本の読み込みベースの独習であることに変わりはありません。例えば週30時間の勉強時間を確保している人は、週8時間分は指導講座や自主勉強会での勉強時間であるとしても、残りの22時間はしっかり独習に充てる必要があります。週22時間の独習を積み重ねているからこそ、週8時間の指導講座や自主勉強会での集団学習や議論が活きてくるということです。
弁理士試験に合格するためには、一定量を超える勉強時間は不可欠です。青本を何度も繰り返し読んで、重要条文が自然に暗唱できるようになるくらい青本のエッセンスを脳味噌に叩き込むことができれば、合格の栄冠をグッと引き寄せることができるでしょう。例えば、週8時間は指導講座や自主勉強会で勉強しているが、独習は週5時間で済ませている、という週13時間程度の勉強密度では知財法の上っ面しか理解できず、永遠に最終合格は勝ち取れない、と心得るべきです。
年がら年中、同じペース(例えば週30時間)で勉強するというのも得策ではありません。少なくとも本試験終了後は息抜きも必要です(ただし、息抜きが長くなるほど受験生活のリズムが戻りにくくなるので注意)。人間の記憶力は時間の経過とともに“勉強したことを忘れる”という特性がありますから、年間のスケジュールを立てて、試験本番が近づくほど勉強密度が高くなるようにメリハリと戦略を持って勉強時間を調整し、本試験の当日に最大かつ最高のパフォーマンスが出せるように工夫することが大切です。