弁理士試験について語る

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私自身の弁理士“受験界”および本試験との関わり

2018/08/22 公開

弁理士試験「合格の秘訣」のようなものを語るに当たって、私自身の受験歴を含めて、いわゆる“受験界”および本試験との関わりを明らかにしておきます。

≪私の受験歴≫

私は1979~81年の3回、弁理士試験を受けましたが、1979年は短答式(当時は「多肢選択式」と呼ばれていた。)に合格して論文式で不合格となりました。しかし、1980年には短答式で不合格となって論文式に進むことができず、ここで抜本的に勉強法を改めました。
これが功を奏し、知財法の知識や理解度を大きく向上させることができて、1981年に短答、論文および口述式に合格して弁理士資格を取得しました。

その後に受験指導の講師となって気づいたことは、特許法などの知財法の知識や理解がソコソコのレベルであっても弁理士試験には合格できる、ということでした。難関の国家試験といえども所詮は競争/選抜試験です。受験者の中で相対的に上位の成績を取れば良いのですから、合格しただけでは知財法の知識や理解度はたいしたレベルではない、ということです。

≪いわゆる“受験界”との関わり≫

私は1981年から20年以上にわたり、受験者を指導する講師の立場から弁理士試験に関わりを持ってきました。指導講師としての活動は1981年の晩秋(合格発表の直後)から始まりましたが、最初の活動の場は「石川ゼミ」と呼ばれる勉強サークルでした。
私自身がこの自主ゼミに所属して受験指導を受けていましたが、合格者は講師として後進を指導すべし、という不文律がありました。私は石川ゼミHクラスの講師として、毎週日曜日はゼミに通い、5月連休と年末年始の連休中は泊まり込み合宿に参加しました。このHクラスのメンバーとの交流はその後も続きましたが、その中の3人は後に創英を設立した時のパートナーとなっています。

石川ゼミの講師をお役御免となった後は、妙な縁で請われて新たに土曜会と称する自主ゼミを立ち上げることになりました。土曜会では、特実意商の4法と条約(パリ、PCT)の自主テキスト(100本前後のレジュメ集)を手書きで作成しました。当時はPCが普及していない時代でしたので、コピペ機能を使ってレジュメを作成するようなことはできず、すべて手書きでしたので法令や制度の理解が深まりました。
土曜会は創設2年目から複数の最終合格者を輩出し、その後、年ごとに合格者とゼミ員が増えました。やがて幾つものクラスを擁する大規模ゼミになり、最終的には累計で200人近い合格者を輩出しました。

私は1982年からの約20年間、上記の自主ゼミ(石川ゼミ、土曜会)と同時並行で、最大手の受験予備校(ダルニー特許教育センター)での講師活動も続けました。基礎講座から受験対策講座まで、特許法、意匠法および商標法の講師を務め、テキストの作成や答案練習会の問題・解答作成および採点と、その講評も担当してきました。
弁理士としての仕事をしながら、受験界でも自主ゼミと受験指導機関の二足の草鞋を履く講師活動は、かなりの ハードワークでした。しかし、度重なる法改正をフォローアップし、知財法のリーガルマインドを把握する上では、人に教える立場の講師活動は非常に有益であり、これが弁理士としての仕事を“深める”上で役立ったことは間違いありません。その意味で、受験界で長く講師活動を続ける機会に恵まれたことを感謝しています。

私は、世紀の変わり目を過ぎた頃に、上記の自主ゼミ(土曜会)および受験予備校から離れ、いわゆる受験界との関係を断ち切りました。受験界から足を洗った後は、創英で働く受験者と試験の四方山話をすることはあっても、特許法などを弁理士試験の観点で語ることはなくなりました。

≪元試験委員であることと、その守秘義務≫

受験界から離れて数年以上経過してから、本試験の試験委員(工業所有権審議会弁理士試験委員)に任命されて3年間務めることになりました。特許法については、短答・論文・口述の問題/解答の作成から論文採点および口述試験実施までを2年間経験し、翌年、意匠法について口述試験実施のみを経験しました。
身内に受験者がいる者や、受験指導に関与してから日が浅い者は、公平性を担保するため弁理士試験委員を務めることは許されません。私の場合は、受験界との関わりは深く長いものでしたが、それらとの関係が途絶えて数年以上経過したということで任命されました。

試験委員は、特許庁HPで告知されている通り、(1)短答の問題作成から口述の実施まで全てを担当するタイプと、(2)論文の採点のみを担当するタイプと、(3)口述の実施のみを担当するタイプの、3種類があります。私は、特許では上記(1)のタイプだったので、この2年間は、かなりのハードワークになりましたが、大変勉強にもなりました。
特許庁HPで告知されている通り、試験委員には特許庁審判官、弁理士はもちろん、知財高裁判事、大学教授、弁護士も含めて構成されており、特許法の問題と解答の作成を巡って彼らと喧々諤々議論する会議は、たいへん刺激的で学ぶところも多くありました。

弁理士試験委員を務めた者は、その任を解かれた後も国家公務員法に基づく守秘義務が課されます。同法第 100 条は、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」と規定しており、元試験委員である私が「職務上知ることのできた秘密」に基づいて試験合格の秘訣などを語ることは許されません。
これを逆に言えば、試験委員としての「職務上知ることのできた秘密」に基づくものでなければ、たとえ試験合格の秘訣であっても語ることは許されるはずです。例えば、私が試験委員に就任する以前に執筆した文書を再録ないし編集して“試験の傾向と対策”公表しても、それは守秘義務違反になりません。もちろん、特許庁HP等で告知されていることを引用したりしても、それが守秘義務違反にならないことは明らかでしょう。

私は、「東京の特許事務所 創英・所長Hの ほんやら日記」という題名のブログを2005年11月から運営しています。試験委員に就任した後は弁理士試験についてブログで語ることを自粛してきましたが、それ以前にはいくつかの記事を投稿しています。また、創英の季刊情報誌「創英ボイス」にも、試験委員就任前にいくつかの弁理士試験に関する記事を投稿しています。
このページのコンテンツのうち“試験の傾向と対策”に関連する部分は、それら“試験委員就任前”の記事をベースに構成していますので、試験委員として「職務上知ることのできた秘密」に基づくものではないことは明らかです。もちろん、このページを編集するに当たって加筆した内容やコメントもありますが、これらは勉強の方法論や心構え、弁理士受験の考え方に関するものが中心であり、国家公務員法第100条に抵触しないよう配慮しています。

≪いまさら「弁理士試験合格の秘訣」を語る理由≫

最近の20年間、弁理士試験を志す受験者は合格率の激変に翻弄されてきました。合格者数の推移を見ると、下記の通りです(合格率は単純に合格者数を当該年の志願者数で除算)。
――――――――――
西暦年:合格数/志願数(合格率)
1987年:86人/2,933人(2.9%)
1997年:135人/4,564人(3.0%)
2007年:613人/9,865人(6.2%)
2009年:813人/10,384人(7.8%)
2017年:255人/4,352人(5.9%)
―――――――――――
志願者数と合格者数の激変に驚く一方で、合格率(%)は一桁台をキープしており、難関の国家試験であることは変わっていません。

知財の専門家として仕事しようとするなら、弁理士資格を取得することが必要になりますが、簡単に取れる資格ではありません。そうであるにも関わらず、知財の仕事を志す若者が多数いる以上は、彼ら/彼女らが最も効率よく資格取得できる手立てを、その道の先輩(諸般の状況を知っている者)として語ってあげることも必要ではないか、と思った次第です。
そういう思いから、いまさらながら弁理士試験について語り、その「合格の秘訣」を私なりに明らかにしようと考えました。合格のテクニックではなく、合格するために必要なことは何か、将来的に無駄にならない努力をするには何が必要か、を考えたいと思います。

手っ取り早く合格するために、短期で合格した人の体験談を読んで/聞いて、それに倣って集中的に勉強して一気に合格する、というのは理想であり、少数ながらそのような合格者を何人か身近で見てきました。しかし、これを“普通の人”が安直に模倣するのはリスクがあり、簡単にはお勧めできません。
難関試験ですから、簡単には合格できません。当然、数週間や数か月の短期戦ではなく、年単位の長期戦になりますから、勉強の方法論や受験生活を維持するためのマインドを高める工夫も必要になるのです。

実際に試験委員を経験して知り得たことは多々ありますが、これらを暴露することはできません。ただ、言えることは、20年以上も受験界に深く関わってきて、弁理士本試験について思うことや予想/想像することは多々ありましたが、一言でいえば、本試験は受験界の講師時代に「想像していた通りだった」ということです。弁理士試験についていろいろと試験委員就任前にブログなどに書いてきましたが、今、これらを読み返してみると、ほとんどが当たっている…このことに我ながら驚いています。
基本に則った王道をいく勉強をすることが試験合格の最短コースとなる、ということを痛感しています。では、基本に則った王道をいく勉強とは、どういう勉強なのか。そこのポイントを、私なりの考えと理屈で明らかにすることは、まじめに受験勉強されている方々にとって、多少でもお役に立つことがあるはずであり、これが元試験委員としての守秘義務に違反するものではないと思っています。

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プロローグ

第1部 王道を行く弁理士試験勉強法

第2部 短答・論文・口述式試験対策各論

第1章 短答試験

第2章 論文試験

第3章 口述試験

第3部 受験生活を乗り切り、不合格を乗り越える

第4部 弁理士を志望している方に「本音ベース」で贈る言葉

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