[特許/ブラジル] ブラジル特許出願の審査早期化について2つの新たな施策が開始される
(※2017年3月17日に発表された日本-ブラジル間のPPHに関する速報はこちら)
■米国特許商標庁との特許審査ハイウェイ
2015年11月にブラジル産業財産庁(INPI)と米国特許商標庁(USPTO)との間で合意に達していた特許審査ハイウェイ(PPH)の試行が2016年1月11日から開始された。試行期間は2018年1月10日までの2年間又は各庁が150件受理するまでのいずれか早い方とされている。
この米国-ブラジル間のPPHでは、最先の出願(米国及びブラジルで同じ出願日又は優先日となる出願)である米国出願(又はブラジル出願)の審査結果を用いることが求められるため、日本を第1国とする優先権主張を伴う特許出願は要件を満たすことができない。また、米国での審査結果を利用してブラジルでPPHを申請する場合、技術分野が石油・ガス産業関連であることが要求され、両庁間の合意時には出願日が2013年1月11日(試行開始日から3年前)以降のブラジル出願に限られる予定となっていたことから、日本の出願人が活用できる場面はかなり限定的になるものと考えられる。
■優先審査の運用変更
2015年11月10日付けでINPIが公表した決議第151/2015号により、特許の優先審査に関する運用が変更された。従前からの運用とあわせると、優先審査申請に関する主な要件は下記の通りとなった(下線は、今回の決議による新規則で追加されたもの)。
・第三者によって模倣されている場合
・先願の内容が後願の内容と同じ場合(先願の出願人又は特許権者が後願に対して請求)
・特許付与が、金融機関により資金を得るための必要条件である場合
・出願に係る発明がグリーン技術の要件を満たす場合(2016年4月16日までの予定)※他の決議に基づく
また、個人の出願人については、従前の「60歳以上である場合」に加えて、「所定の障害・疾患を患っている場合」にも優先審査が認められることとなった。一方、医薬分野の出願に関して保健省が請求することができた優先審査は廃止された。
【出典】
ブラジル産業財産庁・米国特許商標庁「Memorandum of Understanding between the United States Patent and Trademark Office and the National Institute of Industrial Property of Brazil on a Patent Prosecution Highway Pilot Program」
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