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[特許/インド] インド特許庁、コンピュータ関連発明の審査ガイドラインを公表 (※一時保留及び再公表に関する追記あり)

2015年8月21日、インド特許庁は、ソフトウエア関連発明の審査における画一性と一貫性の促進を目的とするガイドライン「Guidelines for Examination of Computer Related Inventions (CRIs)」を公表し、同日に施行した。

同ガイドラインは21ページにわたり、インド特許法の関連規定である2条(1)(ja)の「進歩性」、2条(1)(ac)の「産業上利用可能性」及び3条(k)~(n)の「発明でないもの」についての条文の引用にはじまり、用語の定義を加えつつ、審査における判断手順が説明されている。そのため、今後の実務における重要な指針になるものと考えられる。

中でも注目すべき点の1つは、特許可能(patentable)と判断されるための決定要素(determinants)についての説明であり、以下の主題(subject matter)が関連すべきものとして列挙されるとともに、事例が紹介されている。

・ 新規なハードウエア、
・ 新規なコンピュータ・プログラムを有する新規なハードウエア、又は
・ 公知のハードウエアを用いる新規なコンピュータ・プログラムであって、そのようなハードウエアとの間で通常の相互作用の範囲を超えて、既知であるハードウエアの機能性及び/又は性能に変化を及ぼすもの

また、技術的進歩(technical advancement)を判断するための指標に関する説明では、3条(k)に基づいて「発明でないもの」と認定されないためには、「ハードウエアと関連付けられたコンピュータ・プログラムの場合、コンピュータとしてより効率的・効果的に動作するという意味において、プログラムがコンピュータをより良いコンピュータにするか否か」などの6つの指標のうちいずれか1つについて肯定的であることを求めている(下記の引用参照)。

6. Indicators to determine technical advancement

6.1 While examining CRI applications, the examiner shall confirm that the claims have the requisite technical advancement. The following questions should be addressed by the examiner while determining the technical advancement of the inventions concerning CRIs:

(i) whether the claimed technical feature has a technical contribution on a process which is carried on outside the computer;
(ii) whether the claimed technical feature operates at the level of the architecture of the computer;
(iii) whether the technical contribution is by way of change in the hardware or the functionality of hardware;
(iv) whether the claimed technical contribution results in the computer being made to operate in a new way;
(v) in case of a computer programme linked with hardware, whether the programme makes the computer a better computer in the sense of running more efficiently and effectively as a computer;
(vi) whether the change in the hardware or the functionality of hardware amounts to technical advancement.

If answer to ANY of the above questions is in affirmative, the invention may not be considered as exclusion under section 3 (k) of the Patents Act, 1970.

これら6つの指標は、発明の技術的側面(特に、技術的貢献、技術的特徴)に着目しているという点で、欧州のソフトウエア関連発明の審査における進歩性の判断手法との類似性が見受けられるため、今後、欧州で進歩性のために用いる対応を流用できる場面も想定される。

なお、同ガイドラインは、2013年6月に公表されたドラフトからの変更点が多く、例えば、ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームの章は削除されている。

【出典】インド特許庁「Guidelines for Examination of Computer Related Inventions (CRIs)


***追記(2015年12月21日)***

インド特許庁は、2015年12月14日付けのOffice Orderにてガイドラインを一時保留にすると発表した。一時保留の理由は、特許法3条(k)の「発明でないもの」に関する解釈および範囲について抗議があったためとされている。なお、当面の審査には、「Manual of Patent Office Practice and Procedure」において特許法3条(k)に関連するチャプター08.03.05.10が適用される。

【出典】インド特許庁「“Guidelines for Examination of Computer Related Inventions (CRIs)” kept in abeyance by Controller General of Patents, Designs & Trade Marks


***追記(2016年2月23日)***

さらに、インド特許庁は、2016年2月19日付けのOffice Orderにて一時保留となっていたガイドラインを再度改訂の上で公表し、同日に施行した。

一時保留前のガイドラインの全21ページから全35ページに分量が増えており、上述の「特許可能(patentable)と判断されるための決定要素(determinants)」についての説明は書き改められ、「5. Tests/Indicators to determine Patentability of CRIs」の章では、下記の3段階のテストが示されている。

5. Tests/Indicators to determine Patentability of CRIs:

Examiners may rely on the following three stage test in examining CRI applications:

(1) Properly construe the claim and identify the actual contribution;

(2) If the contribution lies only in mathematical method, business method or algorithm, deny the claim;

(3) If the contribution lies in the field of computer programme, check whether it is claimed in conjunction with a novel hardware and proceed to other steps to determine patentability with respect to the invention. The computer programme in itself is never patentable. If the contribution lies solely in the computer programme, deny the claim. If the contribution lies in both the computer programme as well as hardware, proceed to other steps of patentability.

※下線部は筆者が追加。

下線部については、日本の特許・実用新案審査ハンドブック「附属書B 第1章 コンピュータソフトウエア関連発明」の「2.1.1.2 ソフトウエアの観点に基づく考え方」における「『ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている』場合は、当該ソフトウエアは『自然法則を利用した技術的思想の創作』である。」と類似しているようにも見受けられる。

しかしながら、今回のインド特許庁のガイドラインにおける例15では、請求の口座(account)を管理するためのシステムに関するクレームが、サーバー、プロセッサ等のハードウエアを限定しているにも関わらず、ビジネス方法の実行に過ぎず、特許法3条(k)により特許可能ではないとされている。このことから、ハードウエア資源をどの程度まで具体化する必要があるかという点において、日本の実務とは相違することとなる可能性も考えられる。

なお、事例については、特許可能なクレームの例を挙げた章が削除された一方、上述の例15をはじめとして、特許可能ではないクレームの例は追加されている。

また、章としては削除されていたミーンズ・プラス・ファンクション・クレームに関する説明は、4章の「Examination Procedure」において、4.4.5として説明が加えられており、手段の構造的特徴を明細書において開示することを求める内容となっている。

【出典】
インド特許庁「Guidelines for Examination of Computer Related Inventions (CRIs) 19th February, 2016」
インド特許庁「OFFICE ORDER 2016年2月19日付け」

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