[特許・不正競争・著作権等/日本]知財関連法改正の審議状況 ~特許・実用新案・意匠「新規性喪失の例外期間延長(6か月→1年)」と商標「分割要件の強化」は、2018年6月9日施行~
(※公布・施行された法律等に関する情報は、こちら又は記事中のリンク先参照)
既報の知財関連法の改正法案のうち、2018年5月末までに下記の1.及び2.が可決・成立し、公布された。また、下記3.の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)については、承認及び関連法律案が2018年5月末までに衆議院を通過している。
(※2018年7月4日追記:2018年6月末までに下記3.も参議院で可決・承認された。)
- 不正競争防止法等の一部を改正する法律
① 不正競争防止法の一部改正
② 特許法、実用新案法、意匠法及び商標法の一部改正
・施行期日=一部の規定(例:②の特・実・意「新規性喪失の例外期間延長」、商標「分割要件の強化」)を除き、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日
(※①を中心に取り上げた別記事はこちら、②を中心に取り上げた別記事はこちら) - 著作権法の一部を改正する法律
① デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備(※この改正事項を中心に取り上げた別記事はこちら)
② 教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備
③ 障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備
④ アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等
・施行期日=2019(平成31)年1月1日(②については公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日) - 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案
→参議院ウェブサイト:議案情報
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件
→参議院ウェブサイト:議案情報
1.は改正事項により施行期日が異なるが、まず下記3つが2018(平成30)年6月9日に施行される。
- [特許法及び実用新案法]新規性喪失の例外期間を6か月から1年に延長
- [意匠法]新規性喪失の例外期間を6か月から1年に延長
- [商標法]商標登録出願の分割要件を強化
※これらの改正事項に関する別記事はこちら
※新規性喪失の例外期間(グレースピリオド)を6か月から1年に延長する改正は、平成29年12月8日までに公開された発明、考案及び意匠については施行日以降に出願しても適用されない点には留意する必要がある。
なお、著作物等の保護期間を50年から70年に延長する措置は、2.の「著作権法の一部を改正する法律」ではなく、3.の「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案」にて対応が取られる。この法律案には、2016(平成28)年12月に公布済みであるTPP整備法(環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律)の施行期日を「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効日」に改正する措置が含まれているが、TPP整備法の実質的な内容については変更が予定されていない。
そのため、法案通りに成立し、かつTPP11協定が発効(協定の署名国のうち少なくとも6又は少なくとも半数のいずれか少ない方の国がそれぞれの関係する国内法上の手続を完了した旨を書面により寄託者に通報した日の後60日(TPP11協定3条))すれば、TPP11協定の「停止(凍結)される規定のリスト」に含まれている事項ではあっても、「著作物等の保護期間の延長」のほか、「審査遅延に基づく特許権の存続期間の延長」も施行される。
また、凍結対象ではない「著作権等侵害罪の一部非親告罪化」も同協定の発効にあわせて施行されることになるが、要件に変更はないため、以下のすべての要件を満たす場合に限り、非親告罪の対象となる。
①対価を得る目的又は権利者の利益を害する目的があること
②有償著作物等(※)について原作のまま譲渡・公衆送信又は複製を行うものであること
③有償著作物等の提供・提示により得ることが見込まれる権利者の利益が、不当に害されること
(※)有償で公衆に提供又は提示されている著作物等
【出典】
(1)特許庁「不正競争防止法等の一部を改正する法律(平成30年5月30日法律第33号)」
(2)特許庁「発明の新規性喪失の例外期間が6か月から1年に延長されます」
(3)特許庁「意匠の新規性喪失の例外期間が6か月から1年に延長されます」
(4)特許庁「自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)」
(5)文部科学省「著作権法の一部を改正する法律」
(6)内閣官房「TPP等政府対策本部:TPP11について」
(7)参議院「議案情報:第196回国会(常会)」
(8)特許庁「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年12月16日法律第108号)」
【参考】
(1)首相官邸「知的財産戦略本部 知的財産推進計画2018策定に向けた検討 【検証・評価・企画委員会】コンテンツ分野会合(第4回)議事次第:資料6 文化庁 説明資料 著作権法の一部を改正する法律案 概要説明資料」
(2)首相官邸「知的財産戦略本部 知的財産推進計画2018策定に向けた検討 【検証・評価・企画委員会】産業財産権分野・コンテンツ分野合同会合(第5回)議事次第:資料2-4 文化庁 説明資料 著作権法の一部を改正する法律案 概要説明資料(AIの利活用促進関係)」
(3)特許庁「特許の審査基準のポイント」、「Outline of the Examination Guidelines for Patent and Utility Model」※特許審査に関する説明資料で、2018年6月14日の更新により新規性喪失の例外期間が6か月から1年に延長されたことが反映された。
【関連記事】
知財トピックス(日本情報)TPP協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律が公布される 2017-03-07
知財トピックス [特許・商標・著作権・不正競争/日本]2018年末~2019年に施行予定の知財関連法改正 2018-12-20
***更新情報(2018年7月4日、5日)***
不正競争防止法等の一部を改正する法律について、2018年6月9日施行の改正事項を別記事にしたことにあわせて、本文を変更
TPP11協定についての審議状況の情報を更新し、著作権等侵害罪の一部非親告罪化に関する説明において引用を追加
***更新情報(2018年8月6日)***
本文及び【関連記事】の欄に、著作権法改正(平成30年改正法)についての別記事へのリンクを追加
***更新情報(2018年9月7日、10日)***
本文に、不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行期日に関する情報等へのリンクを追加
***更新情報(2018年12月20日)***
【関連記事】を追加、整理