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[特許/米国]米国特許商標庁、特許審査便覧(MPEP)の改訂版「Revision 08.2017」を公表 ~101条の特許適格性等についてはメモランダムの公表により更なるアップデートも~

(※続報は【関連記事】のリンク先参照)

2018年1月、米国特許商標庁(USPTO)は特許審査便覧(Manual of Patent Examining Procedure; MPEP)の改訂版「Ninth edition, Revision 08.2017」を公表した。

MPEPには日本の特許・実用新案審査基準、ハンドブック、方式審査便覧、審判便覧等に相当する内容が網羅的に含まれており、今回の改訂は審査及び審判の実体・方式の両方を対象としており、内容も多岐にわたっている。

注目点は米国特許法101条の特許適格性(patent subject matter eligibility;保護適格性、日本の発明該当性に相当)に関する§2106の改訂で、2014年6月のAlice最高裁判決以降にUSPTOが公表してきたガイドライン(ガイダンス、事例集、メモランダム等)の内容を盛り込みつつ、「Revision 08.2017」の名称に現れているように2017年8月までの裁判例を反映させている。そのため、全般には審査実務の変更を意図したものではなく、説明の充実化を図った改訂と言えよう。

そのような意図が現れている一例が図に示すフローチャートで、2014年12月公表の暫定ガイダンスにおけるフローチャート(リンクはこちら(PDF))に対して下記1.~5.の変更が加えられているが、従前と同様にAlice/Mayoテストを特許適格性の評価に用いる唯一のテストとして用いている点に変更はない。

  1. ステップ1の前に「クレーム全体の最も広く合理的な解釈を確立」を追加
  2. ステップ1が「いいえ」の場合において、補正により解消しうるか否かの検討を行うことと、可能な場合には補正の提案を審査官に促すことを示すための矢印を追加
  3. ステップ1が「はい」の場合において、合理化された分析により特許適格性ありと判断する道筋Aを記載
  4. ステップ2Aで「いいえ」の場合において、判例上の例外に該当せず特許適格性ありと判断する道筋Bを記載
  5. ステップ2Bで「はい」の場合において、判例上の例外を遥かに超える追加の要素についての言及(発明概念)により特許適格性ありと判断する道筋Cを記載

3.~5.の道筋A~Cに関する説明では、クレームされた発明の技術的な側面に着目した記述が多く含まれていることから、特許適格性の審査においては、発明が解決しようとする課題及びその解決手段のほか、発明の改良点(improvement)に関連する記載や議論の重要性がより明確になったと考えられる。
(※2018年1月までのCAFC判決及びコメントを含む詳細記事はこちら

<図:改訂後のMPEPにおける特許適格性の判断手順[参考訳]>

2018年1月改訂のMPEP 2106[参考訳]

MPEP201801参考訳

※クリックすると拡大表示できます
原文はこちら

2019年1月公表のガイダンス[参考訳]

2019Guidance参考訳

※クリックすると拡大表示できます
原文はこちら

  • ステップ2A及び2Bでは2014年12月公表の暫定ガイダンスにおけるフローチャートに含まれていた「Mayo Test」の文言が削除されているが、Mayo Testを用いる点は変更されていない
  • 2019年1月公表のガイダンスにおける改訂後のステップ2Aについては、こちらの記事を参照

また、今回のMPEP改訂以降に下されたCAFC判決を受けて、USPTOは2018年4月に下記2つのメモランダムを公表するとともに、うち1つについては意見募集を開始した。

  • Memorandum – Recent Subject Matter Eligibility Decisions: Finjan and Core Wireless
    別記事で取り上げたFinjan v. Blue Coat Systems事件、Core Wireless Licensing v. LG Electronics事件等を受けて、2018年4月2日付けで公表された審査官向けメモランダム
    Finjan v. Blue Coat Systems事件及びCore Wireless Licensing v. LG Electronics事件を、コンピューター技術の改良に焦点をあてたソフトウエア関連発明のクレームは抽象的アイデアを対象としていないと判断した事例(すなわち、上図のフローチャートにおけるステップ2Aで「いいえ」と判断した事例)として紹介している
  • Memorandum – Revising 101 Eligibility Procedure in view of Berkheimer v. HP, Inc.
    2018年4月19日付けで公表された審査官向けメモランダム
    Berkheimer v. HP事件を受けて公表されたもので、上図のフローチャートにおけるステップ2Bの判断における観点である「追加の要素(又は追加の要素の組み合わせ)が、よく知られ、ルーチンで、慣習的な活動か否か(whether an additional element (or combination of additional elements) represents well-understood, routine, conventional activity)」について、MPEPの§2106.07(a)及び§2106.07(b)を改訂する位置付けとなっている
    このメモランダムについては、2018年8月20日まで意見募集が実施される(Federal Register(官報)はこちら(PDF)

特許適格性以外では、例えば、マーカッシュ・クレームに関するセクションの追加に注目できる。具体的には、新設の§706.03(y)において2011年の補充審査ガイドラインでの説明に沿って、「単一の構造的類似性(single structural similarity)」のほか、用途や機能の共通性の観点から、マーカッシュ・クレームの適切性を評価することが明示された。

その他、開示義務(Duty of Disclosure)に関する章であるChapter 2000も改訂されており、情報開示陳述書(IDS)に関する説明の一部がアップデートされている。

審査官向けメモランダムについては、2018年2月から4月までの期間で特許適格性以外にも、下記に示す通り抗体(antibody)の記述要件(Written Description)と旧法102条(e)項に関するものが公表されている。

なお、今回のMPEP改訂及びメモランダムについては、2018年5月3日にUSPTOで開催されたPatent Public Advisory Committeeの会合において概要が紹介された(出典(5)参照)。

【出典】
いずれも米国特許商標庁
(1)「Manual of Patent Examining Procedure (MPEP)
(2)「Change Summary for the Ninth Edition, Revision 08.2017」※Revision 08.2017による改訂の概要
(3)「Patent Examination PolicyMemoranda to the Examining Corps」※本文中の審査官向けメモランダムを含むページ
(4)「Patent Examination PolicyExamination Guidance and Training Materials」※本文中の補充審査ガイドライン(2011年公表の「Supplementary Examination Guidelines signed January 21, 2011」と関連資料を含むページ)
(5)「Patent Public Advisory Committee (PPAC): PPAC Quarterly Meeting (May 3, 2018)」※2018年5月3日に開催された諮問委員会のページでMPEP改訂(PDF)特許適格性(PDF)に関する資料が公表されている

【参考】
いずれも米国特許商標庁
Subject matter eligibility」※特許適格性の審査に関する資料をまとめたページ
Patent Quality Chat」※2018年3月13日に実施されたウェビナー「Subject Matter Eligibility: Guidance & Examination Resources」の動画及びスライドを含むページ

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***更新情報(2019年3月7日)***
2019年1月4日に公表された新たなガイダンスに関する情報を追加

***更新情報(2019年4月5日)***
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