[特許/EU、EP、英国]欧州単一特許及び統一特許裁判所の進捗状況(2017年3~6月:その1) ~2017年12月見込みの運用開始は遅れが不可避に~
(※続報は【関連記事】のリンク先参照)
EU基本条約(リスボン条約)50条に基づき、2017年3月29日にイギリスがEUに対して正式に離脱を通告したことにより、今後、原則2年間を期限とする交渉が進められる。
イギリスによる統一特許裁判所協定(UPC協定)への批准は離脱通告前の3月中との見方もあったが実現はしなかった。その一方で、英国知的財産庁のウェブサイトにて4月4日付けで更新された発表では、UPC協定への批准とあわせて注目されていた手続きの1つである暫定適用に関する議定書(Protocol on Provisional Application)にイギリス政府が署名し、統一特許裁判所(UPC)の運用開始予定は、UPC準備委員会によるスケジュールと同じ2017年12月とされていた。このことから、引き続き、イギリスは批准に向けた作業を続けることが予想されていた。
しかしながら、4月18日にイギリスのメイ首相は下院を解散する意向を表明し、UPC協定批准に関する議決が行われないまま5月3日に下院は解散、6月8日に総選挙が実施されることになった。これにより、イギリスのUPC協定批准は夏以降となることが確実な状況となった。
UPC協定発効の条件であるドイツの批准も最終段階に入ったと伝えられていたことから、今後は、2017年春(5月中)と見込まれていた暫定適用フェーズ(Provisional Application Phase)の開始と、9月が予定されているサンライズ・ピリオド(UPCの裁判管轄に関する適用除外(オプト・アウト)申請についての事前受付期間)の開始へと注目点が移っていくものと考えられていた。しかしながら、イギリス総選挙の実施により、現地では、欧州単一特許(UP)及びUPCからなる欧州単一特許制度の運用開始時期は、2018年初めにずれ込むとの見方が出てきている。
***追記(2017年6月7日、7月5日、7月7日)***
欧州統一特許裁判所は、現地時間6月7日付けでウェブサイトを更新し、2017年12月運用開始のスケジュールを維持できなくなったことを発表した。
その後の発表等については、別報参照(当該別報にあわせて、タイトルを変更)。
【出典】
英国知的財産庁「IP and BREXIT: The facts」
欧州統一特許裁判所「Final Preparatory Committee Signals State of Readiness – 15 March 2017」
欧州統一特許裁判所「UPC – Timetable Update – June 2017」
【参考】
欧州特許庁(フーベルト・フックス審査長)「欧州単一効特許に関するアップデート」※2016年11月18日に日本特許庁等の主催により開催された日欧知的財産司法シンポジウム2016での発表資料
【関連記事】
知財トピックス(欧州情報)[特許/英国、EU、EP]欧州単一特許及び統一特許裁判所の進捗状況(2016年10月~2017年1月) ~統一特許裁判所は2017年12月の運用開始を前提で準備継続~ 2017-01-06
知財トピックス(欧州情報)[特許/EU、EP、英国、ドイツ、スペイン]欧州単一特許及び統一特許裁判所の進捗状況(2017年3~6月:その2) ~運用開始は2018年初頭?~ 2017-07-05
知財トピックス(欧州情報)[特許/EU、ドイツ、EP]欧州単一特許及び統一特許裁判所の進捗状況(2017年8~10月) ~統一特許裁判所は、発効までのスケジュール予想は困難との見方を示す~ 2017-11-06
知財トピックス [特許/EU、英国]欧州単一特許及び統一特許裁判所の進捗状況(2018年2~7月) ~イギリスはEU離脱後も枠組みに残留する意向を表明~ 2018-08-20
季刊創英ヴォイス
vol. 79 知財情報戦略室:欧州単一特許制度 ~制度が開始されるまでに知っておきたい基礎知識~ 2017-04-01