トピックス

  1. TOP
  2. トピックス
  3. [特許/EP]欧州特許庁、異議申立の審理早期化を目的とする新...
知財トピックス 欧州情報

[特許/EP]欧州特許庁、異議申立の審理早期化を目的とする新たな運用を2016年7月1日より開始 ~審査についても早期化の目標を設定~

2016年6月13日、欧州特許庁(EPO)は、異議申立(opposition)に関する今後の取り組みを発表し、それに基づく新たな手続きの運用を7月1日より開始した。これにより、異議申立の手続きを簡略化するとともに早期の決定を実現しつつ、口頭審理の召喚(summon)への対応及び準備のためにより多くの時間を提供するとしている。この点に関して、新たな運用に関する通知(notice)によれば、口頭審理の期日は召喚状の発送から最低6か月とする一方で、実体面の審理に関する答弁書等の提出期限(4か月;その他の場合は2か月)の延長は例外的なケースに限るとしている。したがって、庁内における処理全般の効率化に加えて、当事者に対しては期限延長を制限することで、審理期間全体の短縮を目指すものと考えられる。

また、EPO長官は、7月26日付けのブログ記事において、異議申立に関する今回の新たな運用は、サーチに関する取り組みとして2014年7月から実施してきた「Early Certainty from Search」を拡大するものであると説明しており、早期化の取り組みは異議申立だけでなく、審査についても実施するとしている。目標は、サーチ及び見解書が6か月、審査が平均12か月、異議申立が通常のケースの場合で15か月(異議申立期間満了から決定まで)で、達成時期を2020年としている。なお、異議申立の審理期間は、現在26か月(前述の6月13日付け発表によれば、19~27か月)とのことである。

下記のとおり、EPOが目標として設定した15か月という異議申立の審理期間は、他の五大特許庁における無効審判等の審理期間と比べた場合、制度上及び統計手法上の相違点を考慮しても、少なくとも日中韓よりは長くなることが見込まれる。しかしながら、現状の改善に向けた一歩であることは間違いないと言えよう。

<五大特許庁における審理期間>

  • 欧州:(異議申立)26か月[現在]→15か月[2020年目標]
  • 日本:(無効審判)10.5か月[2015年]
  • 米国:(当事者系レビュー) 法定により審理開始後原則12か月以内、申立から最終書面決定まではおおよそ18か月以内
  • 中国:(無効審判)6.4か月[2014年]
  • 韓国:(商標を含む当事者系審判)5.9か月[2015年]、(特許に関する審判)7.2か月[2015年]

***更新情報(2016年10月11日)***
欧州以外の審理期間に関する出典を追加。韓国の審理期間について誤記を訂正。

【出典】
欧州特許庁「Early Certainty: New opposition procedure from 1 July
欧州特許庁「Blog: The Expansion of Early Certainty
日本特許庁「特許行政年次報告書2016年版第1部第1章5.
米国特許商標庁「Patent Trial and Appeal Board / Trials
韓国知的財産庁「Intellectual Property Trial and Appeal Board 2016
韓国・국가지표체계(参考訳:国の指標システム)「특허 등 심판청구/처리 현황(参考訳:特許などの審判請求/処理の現状)」
Five IP Offices「IP5 Statistics Report 2014 Edition: Statistical Tables」 ※「Statistical Tables」のProceduresシートにおける”pendency time in invalidation in months”より

【関連記事】
季刊創英ヴォイス vol. 76 知財情報戦略室:日米欧中韓における特許付与後手続の基礎知識【NOTE】IP5各庁提供データベースでの異議申立・無効審判の調べ方 2016-04-01

知財トピックス(欧州情報)[特許/EP] <コラム>欧州特許条約における異議申立制度 ~日本の特許異議申立制度との対比を交えて~ 2015-08-04
知財トピックス(米国情報)[特許] <コラム>当事者系レビュー等の付与後手続きに関する経過情報及び統計情報 2016-04-07
知財トピックス(日本情報)特許異議申立制度の利用状況に関する分析(2016年秋版:その1) 2016-09-06

知財トピックス(日本情報・米国情報等)[特許/IP5]<コラム>日米欧中韓における審査期間 2018-04-20

 

CONTACT

弊所に関するお問い合わせはWebフォームよりお願いいたします。