2019年12月4日、神戸にて日中韓特許庁シンポジウム開催
日中韓特許庁シンポジウムでは、日本特許庁長官だけでなく中国国家知識産権局の局長並びに韓国特許庁の長官も出席し、各国の知的財産の捉え方や振興等への取り組みの紹介がありました。
シンポジウム前半にて実施された各庁の法改正(予定含む)の説明を聴講したところ、日本は権利者の立証負担軽減(特に製法特許)に重きを置いて特許侵害訴訟の活発化を図っているのに対し、韓国・中国では懲罰的損害賠償金の制定などによる権利者の受益拡大に重きを置いている印象を受けました。各国の社会情勢、企業の成熟度など様々な理由により、目的はある程度共通していてもアプローチ(優先順位)が異なっているのだと思われます。
シンポジウム中盤では、各国の訴訟・司法改革の動向について、裁判官出身者(中国では現在も裁判官)から発表がありました。弊所会長でもある設樂からは査証制度についての説明もありました。個人的に印象に残ったのは、「査証により、当事者以外の第三者であっても営業秘密をどうしても開示されたくない場合、真実擬制とみなされようとも、査証命令を拒否することも一つである」という発言です。特許侵害訴訟においては、原告側がどのように査証を用いれば自分に有利に働くか(逆に被告側はどこまでダメージを抑えられるか)の訴訟戦略が、これからは必要になると考えます。
シンポジウム終盤では、各発表者のパネルディスカッションがありました。各国がどのような考えにて知的財産権を時代に合わせて修正・変更しているのか、どのような意見、事実を参考にしようとしているのかを垣間見ることができたように思われます。各庁の所属者からは、知的財産権は国家の産業発展政策に直結することから、互いに自国に取ってよいと思うところは取り入れてよりよいものにしようとする気概を感じた次第です。
投稿者 上村勇太