2017年4月1日より意匠審査基準改訂 ~国際調和を念頭に置いた願書等の記載要件変更、新規性喪失例外規定適用に係る運用の明確化等~
2017年4月1日より意匠審査基準が改訂され、同日以降に審査される案件に適用される。ここでは改訂の内容について簡単に紹介する。
1.願書・図面の記載要件の変更(審査基準第2部第1章 21.1.2)
曲面形状などを示すために図面上に施す線等(細線、陰影、点等)については、これらが形状特定のための線等であることが明らかな場合には、意匠の説明における記載の省略を認める。特許庁の資料では、例えば下の眼鏡のレンズに表した線についての説明は、レンズに線を描くことは一般的ではないことから、意匠の説明への記載の省略を認めるとしている。
その他、CGで作成された図面の背景の着色についても、背景であることが明確な場合には意匠の説明への記載の省略を認める等の改訂が行われている。
現状の図面・意匠の説明の実務の基本的な考え方を変更することなく、国際調和を進めるための改訂を行ったとの印象があるが、いずれにせよ、実務上は意匠の説明の記載をしっかり行うことが安全であると考える。
2.新規性喪失例外規定に係る運用の明確化(審査基準第3部)
実務上最も影響が大きいのは、従来は証明書については実質的に第三者証明しか認めていなかったものを、今回の改訂で、一定の記載内容を満たせば、自己による証明であっても証明力があるものとして認めるとしたことである。これにより、証明書の作成の労力や時間をかなり小さくすることができると思われる。もちろん、従来の第三者証明も引き続き認められる。
その他、今まで意匠審査便覧に記載されていた内容の多くが審査基準にも明記された。
3.参考図の取り扱いの明記(審査基準第1部第2章)
必要図に表された意匠とは異なる形態を備えた意匠を「参考図」に表して提出した場合には、これらの参考図は意匠の形態の認定おいて考慮しないことになった。
従来から、参考図として、実施物のバリエーションや出願意匠の変形例を複数示す事例がみられるが、今後は、これらの参考図が含まれていても、審査官からの問い合せや7条の拒絶理由は掛からない。
【出典】
特許庁「意匠審査基準」