[特許/EPO]ダブルパテントに関する拡大審判部の審決
欧州特許庁(EPO)の拡大審判部(EBA)は、2021年6月22日付の審決(G4/19)において、ダブルパテントを理由に欧州特許出願を拒絶し得ると判断し、その根拠も明確にした。
欧州特許条約(EPC)には、ダブルパテントに関する明文の規定は設けられていない。実務上は、同一出願人の複数の欧州出願でクレームされた発明主題が同一であればダブルパテントとして拒絶され、出願人は補正で異なる発明主題とするか、一つの出願を選択するか求められる。クレームが単に部分的に重複している場合は拒絶されない。
本審判事件T0318/14(公開番号:EP2429542 A1)の審査段階では、拡大審判部の従前の審決G1/05およびG1/06を参照して、優先権主張の基礎である既に許可された先の欧州出願と、優先権を主張する後の欧州出願とで発明主題が同一であるため、後の欧州出願がダブルパテントを理由に拒絶されていた。
審判において、審判請求人は従前の審決T1423/07に依拠して、「先の欧州出願と、これを基礎として優先権主張する後の欧州出願との両出願で同一の権利範囲の特許権を取得することは、後の欧州出願の存続期間が1年間伸びることから正当な利益がある」と主張していた。審判部は、統一的な法律の運用解釈を担保するために、ダブルパテントの問題を拡大審判部に付託していた。
EBAは、「EPCに明文の規定は設けられていないが、ダブルパテントの禁止は、EPCの『締約国において一般に承認されている手続法の一般的原則』の一部として広く受け入れられており、EPC第125条により規定されたように、EPCにおいて明白な規定がなくても適用される」として、ダブルパテントを理由に欧州特許出願を拒絶し得ると判断した。
したがって、同一出願人により、
①先の出願に基づく優先権を主張した後の出願がされた場合
②二つの特許出願が同日に出願された場合
③親出願から分割出願された場合
のいずれの場合にも、クレームされた発明主題が同一であればダブルパテントとして拒絶される。
なお、残念ながらどういう場合に発明主題が同一であるか判断の基準となるようなガイダンスは出されなかった。