[特許/ブラジル]最高裁が特許権の存続期間を最低10年保証する規定は違憲と判断
ブラジル連邦最高裁判所(STF)は、2021年5月6日、特許権の存続期間を最低10年保証(実用新案権は7年)する産業財産権法第40条補項*1の規定が憲法違反であると判決した。
また、STFは2021年5月12日に開かれた最終ヒアリングにおいて、この違憲判断が過去に遡って適用されるのかについて判決した。
なお、STFは2021年4月7日、この判決に先立ち、2021年4月8日以降に付与される「医薬品、製法、ならびに健康目的で使用される装置および/または材料」に関する特許権の存続期間について、産業財産権法第40条補項の適用を認めないとする仮処分を出していた。
今回のSTFの判決により、ブラジルにおける特許権の存続期間は次の通りとなる。
(1)最終ヒアリングの議事録の公告日以降に付与される特許については、技術分野を問わず、産業財産権法第40条補項が適用されず出願から20年で存続期間が満了する
(2)最終ヒアリングの議事録の公告日時点で既に付与されている特許については、下記(3)のケースを除いて違憲判断は遡及適用されず、産業財産権法第40条補項の効果は引き続き有効であり、出願から20年を超えて特許権が存続し得る
(3)下記二つのケースに該当する特許については、違憲判断が遡及適用され、出願から20年で存続期間が満了する
(i) 技術分野を問わず、仮処分の日である2021年4月7日までに提起された無効訴訟で、産業財産権法第40条補項の違憲性が争われている特許
(ii)「医薬品、製法、ならびに健康目的で使用される装置および/または材料」に関する特許
なお、STFは判決による副作用を最小限に抑え法的安定性を維持するため、特許権による具体的効果の保存についても決定している。例えば、判決により特許権の存続期間が短縮されることになっても、既に支払われたロイヤルティを返還する必要はない。
今回の最高裁判決を受けて、ブラジル産業財産庁(INPI)は2021年5月18日、判決により影響を受ける特許のリスト(第1弾)を公表した。最高裁判決で言及された、「医薬品、製法、ならびに健康目的で使用される装置および/または材料」の解釈は、対象となる特許を特定する際に重要となるが、その方法論についても説明が付されている。
INPIは、以下に該当する特許は違憲判断が遡及適用され、出願から20年で存続期間が満了すると解釈している。
・国家衛生監督庁(ANVISA)による事前承認を受けた特許
・少なくとも次の一つのIPCが付されている特許:A61B, A61C, A61D, A61F, A61G, A61H, A61J, A61L, A61M, A61N, or H05G
・少なくとも次の一つのIPCが付されている特許:A61K/6, C12Q/1, G01N/33, G16H
・INPIから通知された判決を受けている特許(code#19.1)
・これらの特許に関する追加特許(Certificates of addition)
なお、存続期間が短縮される特許については、特許証が再発行される予定である。
また、INPIは、2021年6月1日、今回の最高裁判決により影響を受ける特許のリスト(第2弾)を公表している。
*1:特許権の存続期間は、特許付与日から起算して、発明特許の場合は10年未満、実用新案特許の場合は7年未満であってはならない。ただし、ブラジル産業財産庁(INPI)が、係属中であることが確認されている訴訟、または不可抗力のために、出願の実体審査をすることができなかったときは、この限りでない。