[特許・実用新案・意匠/中国] 中国第4回専利法改正案(送審稿)が公表される
2015年12月2日に、中国国務院が中国知的財産局より審理のために提出された第4回専利法改正案(送審稿)を公表し、意見募集を行った。
今回の送審稿は2015年4月公表の意見募集稿を修正した内容となっているが、既報(専利全般及び意匠)では取り上げなかった点とあわせて送審稿の注目点を紹介する。
1.間接侵害規定の導入(送審稿62条)
日本の間接侵害規定(特許法101条2号及び5号)と似たような規定となっているが、当該行為をした者は、直接侵害者と共に連帯して侵害行為について責任を負わなければならないとされている。
2.専利権評価書の提出非義務化(同64条)
実用新案権又は意匠権の侵害事件に関して、意見募集稿では、即時の審理又は処理が必要な場合を除き、評価書の提出を義務化していた。今回の送審稿では、人民法院(裁判所)又は専利行政部門は評価書の提出を要求することができると現行法と同様の規定に戻した上で、「当事者双方は主体的に評価書を提出してもよい」という趣旨の文言が追加されている。
3.侵害行為に対する損害賠償額の引き上げ(同68条)
現行法は、損害賠償は損害の補填を原則としており、訴訟では勝訴したが金銭面では敗訴したと評価されることがあった。今回の送審稿では、意見募集稿に引き続き、故意侵害の場合には損害賠償額を状況に応じて1~3倍(意見募集稿での「2~3倍」から変更)に引き上げることができる規定(米国特許法における三倍賠償に相当する規定)が設けられ、帳簿及び資料の提出に関する規定(意見募集稿では61条にあった文言)が追加されている。
一方、裁判所が賠償額を確定できる法定賠償の金額は、現行法及び意見募集稿での規定(1万人民元~100万人民元)から引き上げられ、10万人民元~500万人民元とされている。
4.当然実施許諾制度の導入(同82~84条)
特許権者が書面をもって国務院専利行政部門に何人もその特許の実施を許諾する用意がある声明と共に実施許諾料を明確にした場合、国務院専利行政部門はこれを公表し、公然許諾ができる。また、被許諾者が書面をもって特許権者に通知するとともに許諾料を支払わなければならない。84条では、公然許諾の紛争についても規定されている。
5.特許権の質権設定の導入(同86条)
現行法では、特許権の質権について明確な規定はないが、初めて質権の設定についての規定が追加された。
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