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[意匠/日本]令和3年4月1日施行の「令和元年改正意匠法」について その3 (手続救済規定の拡充)

令和元年のいわゆる「意匠法大改正」によって、意匠法は様々な規定が改正されましたが、その多くは令和2年4月1日に施行されています。

一方、以下の規定については、令和3年4月1日から施行されています。

 

1.複数意匠一括出願手続の導入

2.物品の区分の扱いの見直し

3.手続救済規定の拡充

 

これまで、シリーズで「1.複数意匠一括出願手続の導入」「2.物品の区分の扱いの見直し」についてご紹介しました。

今回はこれらのうち、「3.手続救済規定の拡充」についてご紹介します。

 

■指定期間経過後の請求による延長

意匠法においては、改正前は、指定期間(注)経過後に指定期間を延長することは認められていませんでした。一方、特許法では、以前からPLT(特許法条約)への加入を国内法上で担保するために、指定期間経過後に、請求によってその指定期間を延長することが認められていました(特許法5条3項)。

意匠については、そのような条約による改正の必要性はなかったのですが、特許との制度調和の観点から、同様の救済規定が導入されることになりました(意匠法68で特許法5条3項を準用)。これにより、指定期間経過後2月以内であれば、請求により指定期間を2月延長することができるようになりました(方式審査便覧04.10 1.(16)、2.(10))。

特許庁印紙代は7,200円です。ただし、意匠法第9条第4項の規定に基づく協議指令(同一又は類似の意匠が同日に出願された場合の協議指令)の応答の場合は、4,200円です。

再延長はできません。

国際意匠登録出願(ハーグ出願を利用した日本出願)における「拒絶の通報」の応答期間の延長についても適用されます。

拒絶査定不服審判中に拒絶理由通知がなされた場合の指定期間については、従来から変更はなく、在外者のみに1月の延長が認められます(審判便覧25-04 3(1)(ウ))。

なお、この2月の延長は、請求した日からではなく、指定期間の末日の翌日から起算してなされます。

 

(注)指定期間

・代表的な指定期間は、拒絶理由通知を受けた際の応答期間(意見書の提出期限)です。

・その他、以下のような期間も該当します。

・同日に同一又は類似の意匠に対する協議命令による届出期限

・補正指令が出された際の応答期限

 

■指定期間内の請求による延長

これまでは、特許や商標と異なり、国内居住者には、指定期間内に指定期間を延長することが認められていませんでした(在外者は1月の延長が認められていた。)。

今回、上記の通り指定期間経過後の延長請求が認められるようになったことに伴い、国内居住者にも指定期間内の延長請求が認めらえることになりました。これにより、国内居住者、在外者ともに、2月の指定期間内に期間の延長請求を行うことが可能です(方式審査便覧04.10 1.(16)、2.(10))。

特許庁印紙代は2,100円です。

その他、指定期間経過後の請求による延長と同様に、

・再延長はできません。

・国際意匠登録出願(ハーグ出願を利用した日本出願)における「拒絶の通報」の応答期間の延長についても適用されます。

・拒絶査定不服審判中に拒絶理由通知がなされた場合の指定期間については、従来から変更はなく、在外者のみに1月の延長が認められます(審判便覧25-04 3(1)(ウ))。

・この2月の延長は、請求した日からではなく、指定期間の末日の翌日から起算してなされます。

 

■優先期間経過後の優先権主張を伴う意匠登録出願

日本人出願人にとっては関わることは少ないとは思いますが、第一国官庁に出願してから、6月の優先期間が経過した後であっても、優先期間内に日本国特許庁に出願できなかったことについて「正当な理由」があるときは、優先期間経過後2か月以内にした意匠登録出願について、優先権を主張することが可能となりました。

例えば、米国に第一国出願し、その後、日本に出願する場合に、パリ条約の優先期間である6月を経過していても、「正当な理由」があれば、優先権主張が認められる、というものです(意匠法15条で準用する特許法43条の2)。ただし、正当な理由についての要件は特許同様に厳しいものであり、例えば、期間徒過の原因となった事象が予測可能であるといえる場合(例えば、計画的な入院による代理人の不在、計画停電によるオンライン手続不能等)は、出願人等の講じた措置の如何を問わず、原則として「正当な理由」に該当しないと判断されます。(特許庁「期間徒過後の救済規定に係るガイドライン」参照)

ちなみに、特許法におけるこの規定は、指定期間経過後の請求による延長と同様にPLTに適合させるために導入されたものであり、意匠法においては必ずしも適合させる必要は無かったのですが、特許制度との調和の観点から、今回、導入に至りました。

 

■優先権書類の未提出通知を受けた後の優先権書類の提出

こちらも、外国において第一国出願を行い、その後、パリ優先権主張を行って日本に出願する際の救済規定です。

このようなパリ優先権主張を伴った日本意匠出願を行った場合、日本出願日から3月以内に優先権証明書を提出しなければなりません。これまでは、この期限については特許庁からは何の通知もありませんでした。今回の改正法施行により、優先権書類の提出期間(3月)内に優先権書類の提出がなかったときは、特許庁長官は注意喚起のための通知をし、通知を受けた者は通知から2か月以内に優先権書類を提出することができることとなりました(意匠法15条において準用する特許法43条6項・7項)。

 

■救済規定が適用される対象となる出願

指定期間の請求による延長については、本改正が施行された2021年4月1日以降に指定期間が経過する出願に適用されます。

また、優先期間経過後の優先権主張を伴う意匠登録出願については、本改正が施行された2021年4月1日以降に出願された意匠登録出願(実際の日本への出願)に適用されます。

また、優先権書類の未提出通知を受けた後の優先権書類の提出については、本改正が施行された2021年4月1日以降に優先権書類の提出う期間が経過する出願に適用されます。

 

以上

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