[商標/EU]欧州商標制度改革、2016年初頭から順次施行へ ~EU商標指令及びEU商標規則が承認される~ (※追記あり)
2015年12月23日にEU商標指令(Directive(EU)2015/2436; EU Trade Mark Directive)が、翌24日にはEU商標規則(Regulation(EU)2015/2424; EU Trade Mark Regulation)がEU官報に掲載された。これにより、欧州における商標制度改革が順次施行されることとなり、実務面に様々な影響を与えることが予測されている。
1.EU商標指令(EU Trade Mark Directive)
EU加盟国の商標制度を統制するEU商標指令は、条文数が従前の指令(Directive 2008/95/EC)の19から57となり、下記の事項が含まれている。なお、発効は官報掲載日から20日後だが、2019年1月15日からの適用等が定められている規定もある。
- 無効宣言の申請日以前の使用により識別性を得ていた商標は無効を宣言されない(Article 4(4)第2文)
- クラスヘディングに関するIP Translator 事件における欧州連合司法裁判所(CJEU)の判決(2012年6月)を受けて、商標出願人は指定商品及び指定役務の明確性及び精緻性を確保するように求められる(Article 39)
- 商標権の取消又は無効のための行政手続の導入(Articles 43, 45) ※未導入国には発効から7年以内の創設を義務付け
2.EU商標規則(EU Trade Mark Regulation)
規則の名称が共同体商標規則からEU商標規則に変更され、種々の改正がEU加盟国に直接適用される。施行日は2016年3月23日。共同体商標に関連する改正には下記が含まれる。
- 共同体商標(Community Trade Mark; CTM)を「欧州連合商標(European Union Trade Mark; EUTM)」に改称
- 欧州共同体商標意匠庁(Office for Harmonization in the Internal Market; OHIM)を「欧州連合知的財産庁(European Union Intellectual Property Office; EUIPO)」に改称
- 出願手数料及び更新手数料の基本料金に含まれる区分数を「3」から「1」に変更し、下表のように改定(※金額はユーロ)
なお、OHIMは2016年1月29日付けにて、「支払期限が2016年3月23日以降のCTMについては、施行日前の支払であっても改定後の更新手数料を適用すること」、「更新手数料過払い分の償還」等の措置を実施することを発表している。
【出典】
欧州共同体商標意匠庁「EU trade mark reform legislative package published」、「EU trade mark regulation」
欧州共同体商標意匠庁「Communication of the President of OHIM: renewal fees」、「Reimbursements to users: renewal fees」
EUR-Lex「Directive (EU) 2015/2436」、「Regulation (EU) 2015/2424」
***追記(2016年2月23日)***
~EU商標規則28条(8)の施行について~
2016年2月16日、欧州共同体商標意匠庁(OHIM)は、2012年6月22日より前に出願された欧州商標であって、ニース分類のクラスヘディング(entire heading of a Nice class)を記載して登録されたものについては、施行日から6か月間の移行期間内で出願時に求めていた保護範囲の宣言が認められるとの対応を発表した。
【出典】
欧州共同体商標意匠庁「Communication of the President of OHIM on the implementation of Article 28(8) EUTMR」
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