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[商標/EU]オンライン上のEU商標権侵害における裁判管轄について

1.判決について
「英国」に拠点を置き、オーディオ機器を製造・販売している「AMSNeve」(原告)は、オーディオ機器を販売する「スペイン企業」の「Heritage Audio」(被告)が、EU商標「1073」にかかる商標権を侵害したとして商標権者と共に提訴した(*原告はライセンシーである)。

この訴訟は、英国の知的財産企業裁判所(IPEC)で提起されたため、被告は「直接に英国で宣伝広告し、販売したことはない」との理由で、IPECには裁判管轄権がないとの主張を行った。IPECは、被告はスペインを拠点とし、スペインでWebサイトを運営していることを根拠に、スペインの裁判所が管轄権を持つとの判断を示した。そこで、原告が控訴したところ、控訴裁判所は審理を中断し、欧州司法裁判所(CJEU)に裁判管轄権に関するEU商標規則(以下「規則」)97(5)の解釈について付託したものである。

そして、CJEUは、商品の対象消費者または業者が、その商品の広告等にアクセスできるのであれば侵害行為が行われたと考えるべきであり、実際に商品が購入されたかどうかは関係がないとして、対象となる消費者等が所在する加盟国にも規則97(5)に基づき裁判管轄があると判断した。

2.解説
EUで商標権侵害行為が行われた場合、被告の所在地又は拠点がある加盟国の裁判所が管轄権を有することが原則であるが(規則97(1))、侵害行為が行われた加盟国で裁判をすることも可能である(同97(5))。

しかし、オンライン上の商標権侵害において、侵害行為が「どこで行われたのか」は必ずしも明確ではない。例えば侵害者が広告を作成した場所、広告をアップロードしたサーバーの所在地、広告にアクセスするユーザーの所在地等が異なっていた場合、どこで「侵害行為」が行われたかは様々な解釈が存在しうる。

従来は、侵害者が広告を作成・アップロードするという商業的活動を行った場所に焦点が当てられて、裁判管轄が決められる傾向にあった(IPECの判断)。しかし、CJEUは、オンライン上の侵害においてはそのような場所を特定することは困難なことが多いとして、対象となる消費者等が所在する加盟国にも管轄があるとの判断を示したものである。

今回の判断は、オンライン上の商標権侵害に対する権利行使を容易にするものであり、商標権者にとっては朗報といえる。

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