[商標/ASEAN]アセアン加盟国における商標制度の近況 ~マドプロの加盟状況・利用状況を中心に~
東南アジア諸国連合(ASEAN)の10か国は、従前よりマドリッド協定議定書(マドプロ)への加盟を方針として掲げ、2017年11月末時点ではシンガポール、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ラオス、ブルネイ、タイ(効力発生日順)において発効済となっている。
世界知的所有権機関(WIPO)から公表されている統計によれば、下表のように、ASEAN加盟国の中でも比較的早い時期にマドプロが発効していたシンガポール(2000年10月31日発効)、ベトナム(2006年7月11日発効)及びフィリピン(2012年7月25日発効)では、外国人による出願の40~50%がマドプロを利用した国際登録出願(マドプロ出願)であり、広く利用されていることが分かる。
<ASEAN加盟国における商標出願件数(2015年※1、2)>
※1 カンボジア(マドプロ出願除く)及びブルネイは、2014年のデータ
※2 カンボジア(マドプロ出願)は、2015年のデータ
マレーシアでは必要な商標法改正の準備が進められており、2018年までの加盟を希望するとの意向が示されている。なお、タイでは2017年11月7日に発効したばかりで、インドネシアでは2018年1月2日に発効することとなっており、マドプロ未加盟のASEAN加盟国はマレーシアとミャンマーの残り2か国となる。
一方、商標法未制定のミャンマーでは法案が2017年夏に公表され、2018年初頭までの施行が予想されていたが、2017年11月末時点で施行日は発表されていない模様であり、商標法制定後に着手されるとみられるマドプロ加盟の時期に関する予想も見受けられない。また、公表された商標法法案が先願主義を原則とするという点では現地からの情報は共通しているものの、現在の登記法による保護を受けている商標の再登録に関する経過措置については情報の錯綜も見受けられる。仮に、商標の再登録に関する経過措置が提供されない場合、施行時に出願が殺到する可能性が懸念される。
(追記:その後、2019年1月30日に商標法が成立したが、2019年7月時点で施行日は未定である。)
【出典】
世界知的所有権機関「IP Statistics Data Center」
世界知的所有権機関「Assemblies of the Member States of WIPO Fifty-Sixth Series of Meetings (October 3 to October 11, 2016) Statements: A/56/M03 Malaysia」※第6段落に2017~2018年のマドプロ加盟を希望するとの言及がある
独立行政法人国際協力機構(JICA)「ミャンマーにおける知的財産に関する法律の成立」
【参考】
日本特許庁「マドリッド協定議定書加盟国一覧」
独立行政法人国際協力機構(JICA)「海外の現地情報:ミャンマーにおける知財制度の現状と法案の概要(PDF)」※関連記事の公表時期以降(2016年4月以降)である2018年3月29日に作成された資料
独立行政法人国際協力機構(JICA)「ミャンマ:知的財産行政」※プロジェクトニュースのページでは、ミャンマー商標法・意匠法の仮訳が公表されている
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季刊創英ヴォイス vol. 86 ASEAN HOT TOPICS:ASEANオフィス 業務/活動情報【ミャンマー】(PDF) 2019-08-01 ※ミャンマー商標法の施行に向けた準備状況等について
***更新情報(2018年5月7日)***
【参考】に「ミャンマーにおける知財制度の現状と法案の概要」を追加
***更新情報(2019年7月16日)***
本文の一部をアップデートし、【出典】及び【参考】を追加
***更新情報(2019年8月10日)***
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