続報2:平成27年特許法改正における「職務発明制度の見直し」 ~特許法35条6項の「相当の利益に関する指針(ガイドライン)」が公表される~
(※末尾に列挙した【関連資料】のうち、平成27年改正後の対応状況等に関する調査研究報告書を紹介した記事はこちら[その1,その2,その3])
平成27年改正特許法に関して、2016年4月1日の施行後に公表予定とされていた「特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)」が、4月22日付けの経済産業省告示第131号として公表された。ガイドラインの最終的な内容には、意見募集時(2015年11月13日~12月12日実施)の案からの実質的な変更はなく、全37ページで下記の構成となっている。
- 第一 本指針策定の目的
- 第二 適正な手続
一 総論
二 協議について
三 開示について
四 意見の聴取について
五 基礎資料について - 第三 その他
一 金銭以外の「相当の利益」を与える場合の手続について
二 基準を改定する場合の手続について
三 新入社員等に対する手続について
四 退職者に対する手続について
五 中小企業等における手続について
六 大学における手続について - 第四 職務考案及び職務創作意匠における準用について
今回のガイドラインは、法35条4項に規定される「相当の利益」の内容を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況等に関する事項について指針を定めるものとなっている。そのため、あわせて公表された「指針(ガイドライン)に関するQ&A」では、「契約、勤務規則その他の定めにおいて、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることとする場合(法35条3項;いわゆる原始使用者等帰属)」において、ガイドラインに従って協議等の手続を行う必要はないとの説明がある(Q17及びA17)。
他にも、特許庁ウェブサイトでは出典のページにて、「指針(ガイドライン)の概要」も公表されており、ガイドラインの位置付けや相当の利益の付与手続の流れが、図解を交えて説明されている。中でも、金銭以外の「相当の利益」の付与については、下記が例示されている。また、ガイドライン本文では、表彰状等のように相手方の名誉を表するだけのものは含まれないとされている。
<金銭以外の「相当の利益」の付与についての例>
・「使用者等負担による留学の機会の付与」
・「ストックオプションの付与」
・「金銭的処遇の向上を伴う昇進又は昇格」
・「法令及び就業規則所定の日数・期間を超える有給休暇の付与」
・「職務発明に係る特許権についての専用実施権の設定又は通常実施権の許諾」
なお、既存の職務発明規程等を改定する場合には、労働契約法上の不利益変更には留意が必要と考えられる。
【出典】
特許庁「特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)」
【関連資料】
いずれも特許庁 ※(4)を除き特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書より
(1)平成28年度産業財産権制度問題調査研究:企業等における新たな職務発明制度への対応状況に関する調査研究[平成29年3月]※要約版あり
(2)平成27年度産業財産権制度問題調査研究:企業等における職務発明規程の策定手続等に関する調査研究[平成27年12月]※「<参考>職務発明規程の運用事例」あり
(3)平成25年度産業財産権制度問題調査研究:企業等における特許法第35条の制度運用に係る課題及びその解決方法に関する調査研究報告書[平成26年2月]
(4)我が国、諸外国における職務発明に関する調査研究報告書について[平成25年3月]
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