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用途発明の拒絶審決が取り消された事例

 用途発明の特許出願について、特許法29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないとされた審決が取り消された。(平成18年(行ケ)第10227号)

1.事案の概要

本願発明(『シワ形成抑制剤』に係る発明)は、本願発明前に頒布された引用文献に記載された引用発明(『美白化粧品料組成物』に係る発明)と同一であるから、特許を受けることができないとされた審決の取消しを、本願発明の出願人(原告)が求めたものである。

2.当事者の主張

原告は、本願発明は「『シワ形成抑制剤』の効果を新たに発見し、 それにより新たな用途を生み出したもの」であると主張した。

これに対し被告は、「引用発明の『美白化粧料組成物』を皮膚に適用すれば、 『美白作用』と同時に『シワ形成抑制作用』も奏しているはずのもの」であり、「使用者が容易にその効果を実感できるものである」から、 本願発明により「格別新たな用途が生み出されたとすることもできない」と反論した。

3.裁判所の判断

以下の理由により、審決を取り消した。

本願出願当時の技術常識によれば、「『シワ』が、皮膚の張り、弾力性が喪失して皮膚に線状の溝が形成される現象であるのに対し、『皮膚の黒化、又はシミ、ソバカス等の色素沈着』が、皮膚にメラミン色素が沈着して褐色~黒色に変化する現象であって、現象として異なること、『シワ』が、正常な弾性繊維とそれによる網状構造が変性し、異常な弾性組織が蓄積することによって起こるのに対し、『皮膚の黒化、又はシミ、ソバカス等の色素沈着』は、メラミン色素の沈着によって起こるものであって、機序が異なること」が認められる。

さらに、マーケット動向の分析結果によれば、本願出願当時、「美白効果を訴求する化粧料、と、シワ、タルミなど老化防止を主に訴求する化粧料は、製品としても異なるものと認識されていた」ことが認められる。

よって、「当業者が本願出願当時、『美白化粧料組成物』にかかる引用発明につき、『シワ』についても効果があると認識する余地はなかった」ものと認められる。

また、引用発明は、「色素細胞を白色化して、紫外線による皮膚の黒化若しくは色素沈着を消失させ又は予防するものであるから、この点において、予防・治療法として、本願発明と共通するということはできない。」。

以上のような理由に基づき、「本願発明の『シワ形成抑制』という用途は、引用発明の『美白化粧料組成物』とは異なる新たな用途を提供したということができる」と判断した。

以上

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