[特許/GCC] 特許出願の受付停止
湾岸諸国協力会議(GCC*1)の最高理事会は、2021年1月5日、特許規則の一部改正を承認した。これに伴い、GCC特許庁は同年1月6日以降の新規特許出願の受付を停止した。改正特許規則の内容は、2021年4月11日付で公告されている。
本改正では、特許規則第1条、第4条、第9条、第17-21条、第25条、第28-30条、第32条、第33条が改正されるとともに、第1条の2が新設され、第31条が廃止されている。「GCC特許庁で付与された特許について加盟6カ国で法的保護を享受する」とされていた改正前の第1条7項が廃止された結果、GCC特許庁に出願し審査をパスして特許になれば、特許権の効力が全加盟国(6ヶ国)に自動的に及ぶという「統一特許付与」の機能は無くなった。
また、新設された第1条の2第1項においては、GCC特許庁は、GCCのいずれかの国の要請により、特許出願の受付、審査、特許付与に責任を負うとされている。GCC特許庁への要請は、GCC各国が任意に選択できる。さらに第1条の2第2項において、GCC加盟国は、特許出願の受付、審査、特許付与の全部または一部を要請するかをGCC事務局に通知することとし、要請しない部分には、各国特許法を適用するとされている。特許付与は、要請国からの承認を条件とし、当該国においてのみ有効である。
なお、登録済の特許権については、権利期間満了までGCC加盟国で有効であるとされている。一方で、出願係属中の案件については、通商協力委員会が取り扱いについて発表することになっているようである。
今後、GCC加盟国において特許権を取得するためには、以下の2通りの方法を利用することとなる。
・パリルート:パリ条約による優先権を主張し、各加盟国へ出願
・PCTルート:PCT国際特許出願により各加盟国へ移行(GCC全加盟国はPCTにも加盟している)
本改正により、GCCにおける権利化においては各国で特許出願が必要になっており、手続の煩雑化は否めない。また、GCC加盟国のうちサウジアラビア特許庁はオペレーションがスムーズに進んでいると言われているものの、他の5か国はオペレーションが上手く進んでないと言われており、懸念が残る。この点、各国の要請に基づいて、GCC特許庁が特許出願の受付、審査、特許付与の全部または一部に責任を負う旨が規定されたことは救いであり、今後どの加盟国がどのような要請を行うのか注目したい。
*1:GCC(Gulf Cooperation Council):中東・ペルシア湾岸地域における地域協力機構。加盟国は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールの6カ国。
【出典】
ジェトロ「【中東アフリカIP情報】GCC特許庁特許規則改正」