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[特許/韓国]2025年の韓国特許庁における運用変更及び特許法改正

2025年の韓国特許庁における運用変更及び特許法改正のうち、実務に影響を与え得るポイントを紹介する。

1.運用変更
(1)拒絶査定不服審判の認容時の対応(2025年1月1日から適用)
従来の運用では、拒絶査定不服審判の審理の結果、登録査定が妥当であるとともに追加の争点がなく登録認容と判断される場合であっても、審査局に差し戻され(出典2のフロー参照)、原審査官が再度審査し、登録査定をする必要があった。この差戻し審理により、登録査定までの期間に遅延が発生していた。

2025年1月1日からの運用では、拒絶査定不服審判の審理の結果、登録認容と判断される場合には、審判官が直接登録査定をすることが可能となった。これにより、従前に比べて登録査定までの期間の短縮(出典1によれば1-2カ月の短縮)が期待される。

ただし、審査段階で審査されていない争点がある場合や新たな拒絶理由が発見される場合等、追加の審査が必要な場合には、従来と同様に、審査局に差し戻される。

(2)分割出願を審査する際の順位(2025年1月1日から適用)
従来、分割出願を審査する際の順位(審査の順番)は、原出願の審査請求日に基づく順位となっていたが、2025年1月1日からの運用では分割出願の審査請求日に基づく順位となる。この変更により、分割出願に関する審査は従来よりも遅くなることが予想される点に留意する必要がある。なお、当該運用変更は、2024年11月1日時点で審査順位がすでに付与されていた分割出願も対象となるとされている。

(3)優先審査の対象分野の拡大(2025年2月19日から)
従来の優先審査の対象分野は半導体、ディスプレイ、二次電池分野であったが、2025年2月19日からバイオ、人工知能(AI)、先端ロボットも優先審査の対象分野となる。これらの分野は最大2ヶ月以内の審査期間となる見通しである。また、バイオ、人工知能(AI)、先端ロボットの審査官も増員される予定である。

2.特許法の改正(2025年7月施行予定)
(1)発明の実施行為に「輸出」を追加
現行法では、発明の実施行為とは、物や物を生産する方法の発明の場合、その物を生産・使用・譲渡・貸与又は輸入するか、その物の譲渡又は貸与の申出(譲渡又は貸与のための展示を含む)をする行為であると規定されている。また、物を生産する方法の発明の場合についてもこれと類似する規定となっている。

改正法では、発明の実施行為の中に「輸出」が追加され、海外に輸出する物に関する権利侵害の観点等で、より手厚く特許権者の権利が保護されることになった。

(2)特許権の存続期間延長に関する「期間上限」と「延長可能な特許権数」の制限
現行の特許法では、特許発明を実施するために必要となる許可等のために実施できなかった期間に対し5年を限度として特許権の存続期間を延長することができる。ただし、特許権の存続期間の上限(キャップ)と延長可能な特許権の数には制限がなかった。

改正法では

  • 特許権の存続期間については許可を受けた日から14年を超えない
  • 1つの許可等に対し延長可能な特許権の数は1つのみ

のように制限がなされる。

①については、「許可を受けた日から14年を超えない」との規定であるため、残存期間(許可時から起算した存続期間の残りの期間)が14年を超える場合には、延長不可となる。②に関しては、1つの発明(医薬品)に複数の特許権がある場合の制限である。

この改正により、ジェネリック医薬品の発売遅延を防ぎ、国民の医薬品への早期アクセス権を確保するとともに、特許権の存続期間の延長制度の国際的な調和がはかられる。

<図1:存続期間延長の制限>

<図2:1つの発明に対して延長可能な特許権の数>

(3)国防上必要な発明に関して違反した場合の罰則
現行法には、国防上必要な場合、外国に特許出願することを禁止するか、発明者・出願人及び代理人に対しその特許出願の発明を秘密として取り扱うよう命ずることができるように定められている。このような禁止又は秘密取扱命令を違反する場合には、その発明に対し特許を受けることができる権利と秘密取扱等による損失補償金の請求権を放棄したとみなされるものの、違反行為に対する処罰の規定が設けられていない。

改正法では、国防上必要な場合により、外国への特許出願の禁止又は秘密取扱命令を受けた者がこれを違反した場合、5年以下の懲役又は5千万ウォン以下の罰金を科すように規定が設けられた。

これにより、国防上重要な発明の流出を防止し保護する実効性が高まるものと考えられる。なお、この規定は米国、日本、ドイツ等の規定を参考にしたものと思われる。

 

[出典]
1.韓国特許庁「특허심판원, 거절결정불복심판 인용 시 심판관이 바로 등록결정한다」(和訳:拒絶決定不服審判が認容された場合、審判官が直ちに登録決定する)
2.新興国等知財情報データバンク「韓国における審判制度概要
3.韓国特許庁「‘진정한 발명자만 기재 가능’ 특허법 시행규칙 개정」(和訳:’真の発明者のみ記載可能’特許法施行規則改正)※分割出願の審査順位の内容が記載されている
4.ジェトロ「韓国特許法・実用新案法施行規則の一部改正令が11月1日から運用される
5.韓国特許庁「바이오·인공지능(AI)·첨단로봇 특허심사 빨라진다…4대 국가첨단전략산업 모두 우선심사 대상으로」(和訳:バイオ・人工知能(AI)・先端ロボット特許審査が早くなる…4大国家先端戦略産業すべて優先審査対象に)
6.ジェトロ「韓国特許庁、バイオ・先端ロボット・AI分野の特許審査官60名を採用
7.국회입법예고(国会立法予告)「[2204271] 특허법 일부개정법률안(이철규의원 등 11인)」(和訳:[2204271] 特許法の一部改正法律案(イ・チョルギュ議員など11人))
8.ジェトロ「【法案提出】特許法の一部改正法律案(議案番号:2204271)
9.국회입법예고(国会立法予告)「[2204182] 특허법 일부개정법률안(고동진의원 등 11인)」(和訳:[2204182] 特許法一部改正法律案(高東進議員など11人))
10.ジェトロ「【法案提出】特許法の一部改正法律案(議案番号:2204182)
11.국회입법예고(国会立法予告)「[2203858] 특허법 일부개정법률안(이철규의원 등 10인)」(和訳:[2203858] 特許法一部改正法律案(イ・チョルギュ議員など10人))
12.ジェトロ「【法案提出】特許法の一部改正法律案(議案番号:2203858)
13.崔達龍国際特許法律事務所「韓国特許法

 

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