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[特許・実用新案・意匠/中国]専利法実施細則・専利審査指南の改正(第5編)  ~ 実用新案 ~

 既報の第4編では、コンピュータプログラム関連発明の登録要件に関する改正点を解説した。今回は、実用新案(中国語原文では、「実用新型専利」)に関する改正点を解説する。

1.遅延審査
 中国では、専利法実施細則(以下、実施細則)は専利審査指南(以下、審査指南)に対し上位法規である。それぞれ、日本の特許法・実用新案法・意匠法の施行規則および審査基準に相当するとされている。

 遅延審査については、従来、上位法規である実施細則には規定されておらず、下位法規である専利審査指南のみに、その第5部分第7章第8.3節において、出願人は特許出願および意匠出願について遅延審査請求が提出できることが規定されていた。

 今回の改正により、実施細則第56条に「出願人は、専利出願について遅延審査請求が提出できる」との第2項が追加された。中国の「専利」とは、日本の特許、実用新案、意匠に相当するものであるので、上記の改正により、特許出願および意匠出願に加えて、実用新案出願についても遅延審査請求が認められるとともに、上位法規にて遅延審査が正式に規定されることとなった。

 実施細則の改正に合わせて、審査指南の上記節が改正され、従来から認められていた特許・意匠の遅延審査についても、遅延期間等が変更された。改正後の遅延審査に関する規定は下記表1のようになった。

 従来認められていなかった実用新案出願における遅延審査も請求できることになったので、知財戦略的な観点から実用新案の登録公告時期を遅らせることを希望する等の場合には、従来の特許や意匠と同様に遅延審査請求で対応することが考えられる。

 意匠出願について、月単位で遅延期間を請求できることになったので、新製品の発表・発売時期に合わせて意匠の登録公告時期を遅らせることを希望する等の場合に有効であると考えられる。

 また、遅延審査請求は、一旦提出したら取り下げることができなかったことに対し、今回の改正により、いつでも取下げができることになったため、遅延審査を請求したものの、その後遅延を希望しなくなった等の場合に、取り下げの対応が可能となった。

 なお、遅延審査に関する庁費用がない点および遅延期間の変更請求が認められない点は変更されていない。

2.実用新案に対する進歩性の審査
 中国では、実用新案出願は初歩審査(方式審査)のみの登録制度を採用している。しかしながら、日本の実用新案のいわゆる無審査登録制度とは異なり、初歩審査において新規性等も審査されることが、実施細則第50条第1項により規定されていた。今回は、同条同項の改正により、初歩審査の項目に「一見してわかる進歩性の有無」という項目が更に追加されている。

 ✓「一見してわかる」について
 審査官によって差があることは考えられるものの、「一見してわかる」とは、具体的にはどのようなことなのか、審査官は文献の検索等を行わないのかといった点は気になるところである。従来から、実用新案出願の初歩審査では、「一見してわかる新規性の有無」については審査されてきている。ここでの「一見してわかる」については、文献の検索等を行わないことを意味せず、通常、審査官が手間のあまり掛からないと思われる程度で従来技術文献を検索し、引用していた。従って、今回の改正による「一見してわかる進歩性の有無」の審査においても、同程度の文献検索・引用が行われるものと考えられる。

 ✓「進歩性の有無」について
 改正された審査指南によれば、進歩性の有無の判断は、改正前後で内容に変更がない無効審判段階の審査規定を参照して行われるとされている。例えば、実用新案の進歩性審査においては、通常、2つを超える従来技術文献を引用しないというルールとなっている。

 上記点を考慮すると、初歩審査にも関わらず更に実体的な審査がなされるようになったといえる。その結果、査定率の低下が予想されるが、言い換えれば厳しい初歩審査を経て登録されることとなるので、改正前と比べて安定した権利になるものと考えられる。

 なお、今回の改正により、実用新案出願と同様に、意匠出願の初歩審査においても「一見してわかる創造非容易性の有無」という審査項目が追加された。

3.技術評価書の請求可能時期
 中国では、実体審査を経ていない実用新案および意匠については、技術評価書(中国語原文では、「専利権評価報告書」)制度が設けられている。

 今回の改正により、実施細則第62条第1項には、出願人は実用新案および意匠について専利権登録手続き(登録に関する費用を支払う手続き)を行う際に中国特許庁に技術評価書の作成を請求できるとの規定が追加された。また、実施細則第63条第1項には、出願人は専利権登録手続きを行う際に技術評価書の作成を請求した場合、中国特許庁は、登録公告日から2ヶ月以内に技術評価書を作成すべきであるとの規定が追加された。つまり、従来と比較して、出願人による技術評価書の作成請求に関する規定は、以下表2のように変更されている。

 これにより、あらかじめ技術評価書の作成を請求する予定がある場合には、技術評価書の作成を請求するために改めて手続きするのではなく、専利権登録手続きと同時にすることが可能になったため、出願人/権利者の利便性が高まっていると思われる。

※ 専利権登録手続きとは、許可通知に記載された期限内に、出願人が中国特許庁に専利権登録に関する費用を支払う手続きである。なお、中国専利の許可通知は、特許に関しては実体審査において特許出願が拒絶理由に該当しない場合に発行され、実用新案および意匠に関しては初歩審査に合格した後に発行される。

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