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[特許・実用新案・意匠/中国]専利法実施細則・専利審査指南の改正(第3編)  ~ 一般的な登録要件 ~

 既報の第2編では、改正専利法実施細則(以下、改正細則)および改正専利審査指南(以下、改正指南)における願書・明細書の記載事項に関する改正点を解説した。今回は、一般的な登録要件に関する改正点を解説する。一般的な登録要件に関する改正点は、改正指南にのみ含まれており、改正細則には含まれていない。

1.疾病の診断方法
 専利法第25条に、疾病の診断方法は専利の登録適格性がないと規定されている。疾病の診断方法に関する認定要件は、審査指南第2部分第1章第4.3.1節に、(1)生きている人体又は動物体を対象とすること、および(2)疾病の診断の結果又は健康状態の獲得を直接的な目的とすることが規定されている。

 疾病の診断方法に関する改正指南における改正点を、中国特許庁による改正指南の解説に基づいて説明する。

 a)診断方法に該当する方法の事例から「血圧測定法」が削除
 技術の発展に伴い、専利出願に係る血圧測定に関する発明の直接的な目的が、疾病の診断の結果又は健康状態を獲得することではなく、中間結果情報を取得することにすぎないものがますます多くなった。「中間結果情報を取得する」こととは、例えば、安全保護の提供、フィットネス方法の改良又は睡眠の質の改善などを目的とするものが挙げられる。このような目的は、上記疾病の診断方法に関する認定要件(2)の認定要件を満たさないため、改正指南では、「血圧測定法」の事例が削除された。

 b)診断方法に該当しない事例に「すべてのステップをコンピュータ等の装置が実施する情報処理方法」が追加
 医療分野において、コンピュータ等の情報処理能力を有する装置で実施される診断に関する情報処理方法は、一般的に情報処理の正確性を向上させたり、情報の識別、記憶及び伝送を行いやすくさせたりするためのものである。コンピュータ等で提供する結果は確率値にすぎず、通常、医師による疾病の診断及び治療案決定のための参考情報にしかならないものである。このため、疾病の診断方法には該当しない事例として、「すべてのステップをコンピュータ等の装置が実施する情報処理方法」が追加された。なお、すべてのステップをコンピュータ等の装置が実施する情報処理方法には、当然一部のステップのみを実施する場合は含まれない。一部のステップが診断方法に関連するステップである場合には、診断方法に該当する可能性があるためである。

2.進歩性
 中国の進歩性認定はスリーステップ法(中国語原文では、三歩法)が採用されている。スリーステップ法とは、①主引例を特定し、②本発明と主引例の発明との区別的特徴を特定した上で本発明の課題を改めて認定し、③当該課題に基づいて本発明は容易か否かを判断する、という3つのステップである。

 改正指南では、ステップ①およびステップ②について、以下の点で、妥当とはいえない進歩性判断を抑制する内容が加えられている。

 1)ステップ①については、主引例を特定するにあたり、本願明細書に記載されている課題に関連する従来技術を優先して考慮すべきであるとされている。
 2)ステップ②については、改めて認定された課題は、区別的特徴自体であるべきではなく、区別的特徴への導きや示唆を含むべきではないとされている。

 さらに、ステップ②における下記事例が挙げられている。

これらの点を纏めると、進歩性評価における論理付けが改正前よりも強化され、進歩性認定において後知恵による結論が回避される可能性が高まってくると考えられる。

3.単一性
 従来、審査指南第2部分第8章第4.4節には、審査官は、請求項に記載された発明が単一性の要件を満たさないと認める場合には、審査意見通知書にて独立請求項1またはその従属項のみに審査意見を述べるとともに、単一性の要件を満たすように、当該要件を満たさない他の請求項(即ち、独立請求項1およびその従属項以外の請求項)の削除または補正を出願人に要求することができると、規定されていた。この規定により、下記の図に示すように、例えば、審査官は1番目の請求項グループに記載された発明に対し進歩性欠如を指摘するとともに、1番目の請求項グループに記載された発明と、2番目の請求項グループに記載された発明とは単一性の要件を満たさないため、2番目の請求項グループの削除を出願人に要求した場合には、出願人が1番目の請求項グループを削除すると、審査官の削除要求に対応していない理由で補正が拒絶されてしまうおそれがあった。

<図:従来の単一性指摘に対応するときのリスク>

 改正指南では、上記規定において「当該要件を満たさない他の」という文言が削除された。これにより、請求項グループを問わず、単一性の要件を満たすように、削除または補正をすることが可能になり、出願人の利便性が高まっている。

【出典】
JETRO「『専利審査指南』(2023)改正についての解説(三)」等

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