[特許・実用新案・意匠/中国]専利法実施細則・専利審査指南の改正(第2編) ~ 願書・明細書の記載事項編 ~
既報では、改正専利法実施細則(以下、改正細則)および改正専利審査指南(以下、改正指南)における手続き時期に関する改正点を解説した。今回は、願書・明細書の記載事項に関する改正点を解説する。
1.外国出願人の住所
従来の規定では、願書に外国出願人の住所が位置する国および市(県、州)の記載が必要であったが、改正指南の第1部分第1章第4.1.7により、国のみの記載でよいとの規定に変更されている。この改正による実務上のメリットとしては、国のみを願書に記載する場合には、国境を越えない住所変更であれば、住所変更手続きを行う必要がないという点である。
なお、実務上、従来通り願書に市(県、州)まで記載しても、出願が正常に受理され、公開公報にもその住所が掲載される。しかしながら、この場合には、後日、国境を越えない住所変更であっても、中国特許庁への住所変更手続きを行う必要があるものと考えられる。
また、願書の記載事項ではないが、従来通り、中国国外(外国)の住所である場合には、願書に外国語で記載された詳細な住所を添付する必要がある。ただし、添付される外国語での詳細住所は、参考用のものであるため、後日住所を変更する場合であっても、添付書類に関する変更手続きを行う必要はない。
2.発明の名称・要約の文字数
発明の名称・要約の文字数に関する改正は下記表1の通りである。
表1から分かるように、発明の名称の文字数上限は60字まで緩和された。また、要約の文字数上限は、実施細則からは削除されたが、審査指南では変わっていないため、実務上は、依然として要約を300字以下にする必要があるものと考えられる。
上記制限は、中国特許庁への直接出願およびパリ優先権に基づく出願に適用される規定であり、PCT国際出願の中国国内段階移行案件(以下、PCT移行案件)には適用されない。PCT移行案件においては、要約を含む明細書の訳文は国際公開公報に記載されている原文と一致させる必要がある。したがって、PCT移行案件の場合、上記改正の影響は受けず、従来通り発明の名称も要約も文字数の制限はないと考えられる。
3.図面
従来の規定では、特許・実用新案出願において、原則としてモノクロの図面のみが提出可能であったが、改正指南の第1部分第1章第4.3節により、関連技術内容を明確に説明するためであれば、カラー図面を提出できることが明文化されている。これについて、中国特許庁による改正説明会では、蛍光染色手法を利用した実験の結果を説明するために、カラー図面を付した方がよいという例が挙げられていた。