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知財判決ダイジェスト

特許 令和6年(行コ)第10006号「フードコンテナ並びに注意を喚起し誘引する装置及び方法」(知的財産高等裁判所 令和7年1月30日)

【事件概要】
 発明者の氏名として人工知能の名称が記載された特許出願の却下処分の取消しを求める請求を棄却した原判決が維持された事例。
判決要旨及び判決全文へのリンク

【争点】
 特許権により保護される「発明」は自然人によってなされたものに限られるか。

【結論】
(1)特許法上の「発明」と特許を受ける権利について
ア …特許権は、特許法により創設され、付与される権利であり、特許を受ける権利もまた、同法により創設され、付与される権利である。特許法は、特許権及び特許を受ける権利の実体的発生要件や効果を定める実体法であると同時に、特許権を付与するための手続を定めた手続法としての性格を有する。

イ 特許法29条1項柱書は、「産業上利用することができる発明をした者は、…その発明について特許を受けることができる。」と規定しており、同項の「発明をした者」は、特許を受ける権利の主体となり得る者すなわち権利能力のある者であると解される。

 また、同法35条1項にいう「従業者等」が自然人を指すことは、文言上、同項の「使用者等」に法人、国又は地方公共団体が含まれているのに対し、「従業者等」には法人等が含まれていないことから明らかである。そして、同条3項は、「従業者等がした職務発明」について、…特許を受ける権利が原始的に使用者等に帰属する場合があることを定めているが、同項の規定も発明をするのは自然人(従業員等)であることを前提にしている。特許法上、「特許を受ける権利」の発生及びその原始帰属者について定めた規定は、…同法29条1項柱書及びその例外を定める同法35条3項以外には、存在しないから、特許法上、「特許を受ける権利」は、自然人が発明者である場合にのみ発生する権利である。そして、本件で問題となっている国際出願に係る国内書面のほか、特許出願の願書…、出願公開…、国際出願の国内公表…、設定登録に係る特許公報…については、いずれも「発明者の氏名」を記載又は掲載するものとされ、それぞれ、特許出願人、出願人又は特許権者について「氏名又は名称」を記載又は掲載するものとされていることと対比しても、発明者については自然人の呼称である「氏名」を記載又は掲載することを規定するものであって、職務発明の場合も含め、発明者が自然人であることが前提とされている。

ウ そうすると、特許法は、特許を受ける権利について、自然人が発明をしたとき、原則として、当該自然人に原始的に特許を受ける権利が帰属するものとして発生することとし、例外的に、職務発明について、一定の要件の下に使用者等に原始的に帰属することを認めているが、これら以外の者に特許を受ける権利が発生することを定めた規定はない。また、同法に定める「特許を受ける権利」以外の権利に基づき特許を付与するための手続を定めた規定や、自然人以外の者が発明者になることを前提として特許を付与するための手続を定めた規定もない。したがって、同法に基づき特許を受けることができる「発明」は、自然人が発明者となるものに限られると解するのが相当である。

【コメント】
 原判決(東京地方裁判所令和6年5月16日判決・令和5年(行ウ)第5001号)と同様、本判決も、特許権により保護される「発明」は自然人によってなされたものに限られると判断した。原判決は、判断に当たって知的財産基本法の規定も参照したのに対し、本判決は、特許権も特許を受ける権利も特許法により創設され、付与される権利であるという前提から出発して、特許を受ける権利の発生及びその原始帰属者について定めた規定は同法第29条第1項柱書及び第35条第3項以外に存在しないから、特許を受ける権利は自然人が発明者である場合にのみ発生する権利であると結論付けており、特許法の規定に即した判断といえる。

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