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知財判決ダイジェスト

特許 令和5年(行ケ)第10101号「鑑定証明システム」(知的財産高等裁判所 令和6年4月25日)

【事件概要】
 本件は、無効審判事件において、「本件審判の請求は、成り立たない。」とした審決が維持された事例である。
判決要旨及び判決全文へのリンク

【争点】
 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしているか否かである。

【結論】
 法36条4項1号に規定する実施可能要件については、明細書の発明の詳細な説明が、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、特許請求の範囲に記載された発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているかを検討すべきである。

 本件明細書の発明の詳細な説明には、「ユーザーは、アプリケーション[B]を用いて、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁、およびギャランティカードに付与された秘密鍵β₁を使用して、専用プラットフォームのブロックチェーンデータに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込むことができ」ることが記載されている。また、「要鑑定製品1およびギャランティカードを所有する真のユーザーだけが、信頼性の高い鑑定証明を簡単に行うことができる」との本件各発明の奏する効果を考慮すると、本件明細書の発明の詳細な説明には、「ユーザー4が要鑑定製品1およびギャランティカードを所有する真のユーザーであるという認証を行った後に、認証されたユーザーだけが、専用プラットフォームのブロックチェーンデータに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込むことができ」ることも記載されているといえる。

そして、本件各発明の属する暗号技術分野において、秘密鍵で暗号化し、その秘密鍵と対の関係にある公開鍵で復号化することにより、本人認証を行う公開鍵暗号方式によるデジタル署名技術は、本件特許の出願当時の技術常識であったことが認められる。

そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、上記の出願当時の技術常識に基づくと、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁及びギャランティカードに付与された秘密鍵β₁は、それらと対の関係にある公開鍵と共に、ユーザーが要鑑定製品1及びギャランティカードを所有する真のユーザーであるという本人認証に使用されることが自然であると理解できるから、本件明細書の発明の詳細な説明には、アプリケーション[B]を用いる許可を得るための本人照合の手段として、要鑑定製品1に付与された秘密鍵α₁及びギャランティカードに付与された秘密鍵β₁で暗号化し、秘密鍵α₁及び秘密鍵β₁と対の関係にある公開鍵で復号化することで本人認証を行うデジタル署名技術により、ユーザーが要鑑定製品1及びギャランティカードを所有する真のユーザーであるという認証がなされ、認証されたユーザーだけが、専用プラットフォームのブロックチェーンデータに書き込まれた、要鑑定製品1の製品情報および取引情報を読み込むことができることが記載されていると理解できる。

したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしていると認められる。

【コメント】
原告は、本件明細書の発明の詳細な説明には、構成要件E及びFを具現すべき機能等について記載されておらず、不明瞭であり、出願時の技術常識に基づいてもその具現すべき機能等を当業者が理解できないから実施可能要件を欠く旨を主張したが、判決は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者において、技術常識に基づいて過度の試行錯誤を要することなく特許請求の範囲に記載された本件各発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められるとして原告の主張は採用しなかった。

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