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知財判決ダイジェスト

特許 令和5年(行ケ)第10049号「光学イメージング装置」(知的財産高等裁判所 令和6年1月31日)

【事件概要】
 審決に相違点の認定の誤りはなく、本願補正発明は引用例1に記載された発明(引用発明)と周知の手法とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとして、拒絶査定不服審判の請求不成立審決が維持された事例。
判決要旨及び判決全文へのリンク

【争点】
 相違点3の認定の誤り。

【結論】
(1)原告は、…引用発明はローパスフィルタ9がB方向におけるモアレ成分を消去するものであるから、相違点3の認定に誤りがある旨主張する。

(2)しかし、本件審決における引用発明の認定は、引用例1の記載…に照らし誤りは認められないところ…、本件審決が相違点3について「引用発明の『バイモルフ21』(振動素子)は『イメージガイド2の振動方向Aを水晶板より成るローパスフィルタ9の複屈折方向Bに対して、直交させることによりAおよびB方向におけるモアレ成分を消去する』ように作動する点。」と認定したことは、引用発明について「g パルス発生器23から、テレビジョン信号のフィールド周波数よりも相当高い周波数の駆動信号をバイモルフ21に印加し、イメージガイド2の振動方向Aを水晶板より成るローパスフィルタ9の複屈折方向Bに対して、直交させることによりAおよびB方向におけるモアレ成分を消去する」と認定したことと整合するものである。

 また、上記相違点3の認定は、引用発明が、ローパスフィルタ9を用いることなくバイモルフ21の振動のみによってA及びB方向のモアレ成分を消去することまで認定したものではない。引用例1は、各方向のモアレを消去できるように光学軸を設定した多数枚のローパスフィルタ9を設ける必要があるとしており、引用発明におけるローパスフィルタ9も、特定の方向(複屈折方向B)のモアレ成分を消去するものと解される。

 そうであれば、本件審決が認定した相違点3は、複屈折方向Bのローパスフィルタ9がB方向におけるモアレを消去することを前提とした上で、A方向に振動するバイモルフ21がA方向のモアレ成分を消去することを意味すると解するのが相当である。

 原告の…主張は、…引用発明はバイモルフ21の振動のみによってA及びB方向のモアレ成分を消去するものであると認定したかのように曲解し、これを論難するものであって、失当である。

(3)また、本願補正発明では、ローパスフィルタの有無は特定されておらず、ローパスフィルタを有する構成は本願補正発明から排除されていないから、引用発明が「ローパスフィルタ9」を備えていることは、本願補正発明との対比において相違点とはならない。

 さらに、仮に原告の主張するとおりに相違点3を認定したとしても、少なくとも「A方向」に関していえば、モアレ成分が振動により消去されるのであるから、…相違点3に対する容易想到性の結論に影響を与えないことは明らかである。

(4)したがって、原告主張の取消事由1は理由がない。

【コメント】
 原告は、引用発明は「ローパスフィルタ9」がB方向におけるモアレ成分を消去するものであるのに対し、本願補正発明はローパスフィルタを必須の構成とするものではないから、相違点3は「…引用発明のバイモルフ21(振動素子)はイメージガイド2の振動方向Aを…ローパスフィルタ9の複屈折方向Bに対して、直交させることによりA方向におけるモアレ成分を消去するように作動し、ローパスフィルタ9はB方向におけるモアレを消去する点」と認定すべきであると主張したが、裁判所は採用しなかった。

 引用発明が本願補正発明にない構成を有し、本願補正発明を限定したものになっている場合、その構成は本願補正発明との対比において相違点とならないことが多いが、本件もその一例といえる。

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