特許 令和2年(行ケ)第10075号「包装体及び包装体の製造方法」(知的財産高等裁判所 令和3年3月11日)
【事件概要】
この事件は、特許を取消した異議決定の取消しを求めた事案である。
裁判所は異議決定の一部を取消した。
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【主な争点】
本件発明2と甲1発明との相違点2が当業者に容易想到であるか否か。
【結論】
甲1発明及び甲3記載事項は、共に、弁当包装体という技術分野に属するものであると認められる…。
しかし、甲1発明は、熱収縮性チューブを使用した弁当包装体について、煩雑な加熱収縮の制御を実行することなく、包装時の容器の変形やチューブの歪みを防ぎ、また、店頭で、電子レンジによる再加熱をした際にも弁当容器の変形が生じることを防ぐことを課題とするものである…のに対し、甲3に記載された発明は、ラベルを構成する熱収縮性フィルムについて、主収縮方向である長手方向への収縮性が良好で、主収縮方向と直交する幅方向における機械的強度が高いのみならず、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が良好で、後加工時の作業性の良好なものとするとともに、引き裂き具合をよくすることを課題とするもの…である。
そして、上記課題を解決するために、甲1発明は、非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)とでチューブ(20)を形成し、熱収縮性フィルム(22)の周方向幅はチューブ全周長の1/2以下である筒状体であり、熱収縮性フィルム(22)の熱収縮により、弁当容器の外周長さにほぼ等しいチューブ周長に収縮して弁当容器に締着されてなるものとしたのに対し、甲3に記載された発明の熱収縮性フィルムは、甲3の特許請求の範囲記載のとおり、各数値を特定したものである。
これらのことからすると、甲1発明と甲3に記載された発明は、課題においてもその解決手段においても共通性は乏しいから、甲3記載事項を甲1発明に適用することが動機付けられているとは認められない。
…。
したがって、甲1発明及び甲3記載事項に基づいて、相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
【コメント】
被告(特許庁)は、「甲1発明と甲3記載事項とでは、ポリエステルフィルムを用いている点が共通する」旨主張したが、裁判所は、「材料としてポリエステルという共通性があるというだけでは、甲1発明において、熱収縮性フィルムとして、甲3記載事項で示される熱収縮性フィルムを適用することに動機付けがあるということはできない」として被告の主張を採用しなかった。