[意匠/日本] 不正競争防止法等の一部を改正する法律の公布(意匠の新規性喪失の例外適用手続の緩和)
「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が、令和5年6月7日に可決・成立し、令和5年6月14日に公布されました。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/sangyozaisan/fuseikyousou_2306.html
その中では、意匠法4条が改正されており、意匠の新規性喪失の例外適用手続が緩和されることになりました。
具体的には、意匠法第4条第3項が改正され、「ただし、同一又は類似の意匠について第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至る起因となつた意匠登録を受ける権利を有する者の二以上の行為があつたときは、その証明書の提出は、当該二以上の行為のうち、最先の日に行われたものの一の行為についてすれば足りる。」という記載が追加されました。
この改正により、実務上、以下の点が変更になります。
・同じ意匠を複数回公開した(例えば、4月1日にウェブで公開し、5月1日に販売した)場合は、最先(4月1日)の行為について証明書を提出すればよくなった。
・複数の類似する意匠を公開した(例えば、色やサイズや細部の仕様が違うのみで全体としては類似する複数の衣服を公開した)場合は、いずれか一つの意匠について証明書を提出すればよくなった。
例えば、上の図の事例では、A、B、C、DそれぞれのTシャツは互いに類似すると考えられますので、出願人は証明書にAのみを記載すればよいことになります。
これまでは、意匠登録出願よりも前に意匠を公開した場合は、その公開行為の全てを原則として証明書に記載する必要があり、出願人の負担が非常に大きかったのですが、今回の改正でそのような負担が大幅に軽減されることになります。
一方、以下の点には注意する必要があります。
ア)あくまでも証明書は出願日から30日以内に提出しなければならない。
イ)万が一、証明書に記載した公開日よりも前に公開された意匠が証明書提出期間の経過後に見つかった場合は、例外規定の適用を受けることができない。
ウ)出願人が類似だと考えて証明書に記載していなかった公開意匠について、審査・審判において出願意匠と非類似であると認定されれば、当該公開意匠については例外規定の適用を受けることができない。
このウ)については、「公開意匠と出願意匠とが非類似なのだから問題は生じないのではないか」と思われるかも知れません。確かに、新規性(意匠法第3条第1項各号)の規定については問題ないのですが、実は、創作非容易性(意匠法第3条第2項)の問題が生じる可能性があるのです。創作非容易性の規定は、引例と出願意匠とが類似しているか否かは要件となりませんので、非類似であるとして例外規定の適用を受けられなかった公開意匠に基づいて「創作容易である」として拒絶される場合があるのです。
このリスクを避けるためには、公開した意匠が出願意匠と確実に類似している判断できる場合以外は、当該意匠についても証明書に記載しておく必要があると考えます。
なお、この改正の施行日は、公布の日から起算して9月を超えない範囲内とされています。