[特許・実用新案・意匠/中国]専利法実施細則・専利審査指南の改正(第1編)~ 手続き時期編 ~
既報では、改正専利法実施細則および改正専利審査指南の概要をお伝えした。今後、複数回の連載で改正事項における留意点等を解説していく。みなさまのご理解の一助になれば幸いである。本稿(第1編)では、手続き時期に関する改正点を取り上げる。
1.電子ルート庁通知の受領に関する15日ルールの廃止
従来の規定では、電子ルート庁通知と紙庁通知とが区分されておらず、応答期限の起算日となる受領日は、庁通知の発送日から15日を加えた日と推定(15日ルール)されていた。
改正専利法実施細則(以下、改正細則)の第4条第7項には、電子ルート庁通知は、当事者に認められた電子システムに入った日を送達日とすることが新たに規定されている。また、改正専利審査指南(以下、改正指南)の第5部分第7章第2.1節などでは、電子ルート庁通知に対する応答期間の起算日が、推定される受領日から送達日に変更されている。これにより、電子ルート庁通知については、従来の15日ルールが廃止され、応答期間が実質的に15日短縮されたことになる。
なお、電子ルート庁通知は、開庁日でない土曜日に電子システムに入り、次の月曜日に当事者によりダウンロードされるという状況もある。しかしながら、こういった状況については、改正細則や改正指南では言及されていない。したがって、規定通り、土曜日が送達日になると理解するしかない。すなわち、土曜日に電子ルート庁通知が発送された場合、応答期間は実質的にさらに2日短縮(15日+2日短縮)されることとなる。
2.優先権の回復請求の導入
改正細則の第36条および第128では、通常の特許・実用新案出願およびPCT国際出願の中国国内段階移行案件において、優先権の回復制度が新たに導入された。
この制度では、「正当な理由」がある場合、優先期間満了日から2か月以内、または国内段階移行日から2か月以内に優先権の回復を請求することが可能とされている。「正当な理由」との文言は従来から細則第6条で使用されており、その解釈と変わらないと考えられる。経験上、細則第6条の「正当な理由」については、厳しい判断はなされておらず、何らかの理由があれば認容されるものと考えられる。
3.優先権主張の追加/訂正請求の導入
改正細則の第37条では、優先権を主張した特許・実用新案出願については、優先日から16か月以内または出願日から4か月以内であれば、優先権主張の追加/訂正を請求することが可能とされている。上記の請求可能期間は、中国特許庁による改正説明会で、既に主張した優先権に関する優先日を基準にするものであり、追加/訂正しようとする優先権主張によって変わらないと説明された。
4.優先権基礎出願の援用に基づく補正の導入
改正細則の第45条では、優先権基礎出願の援用に基づいて特許・実用新案出願の出願書類を補正することが可能とされている。さらに、改正指南の第1部分第1章第4.7.1節では、出願日に優先権を主張し、同時に援用の声明を提出するという手続きの要件が規定されている。そのため、出願日に援用の声明を提出しなかった場合、後日、補正する必要があることを認識したとしても、もはや援用に基づく補正ができないという点について、懸念の声が上がっていた。これについて、中国特許庁による改正説明会では、援用の声明の提出漏れを防ぐために、定型願書に援用の声明が一律に含まれるように改訂したとの説明であった。以下の図に、改訂後の願書に含まれる援用の声明を示す。
<図:改訂後の特許出願の願書に含む援用の声明の例示>
(和訳:⑲援用補充声明:本出願は提出日に優先権を主張した上で、援用補充方式で欠落したまたは違って提出された書類を補正することを声明する。)